勇敢なる水兵-1
一瞬、何が起きたかわからなかった。轟音と衝撃、そして吹き飛ばされた事までは理解できた。
俺は、周囲を見回す。
辺りを覆っていた煙も徐々に晴れ、周りが見える用になる。
悲劇だ!
先程まで俺がいた速射砲から、かなり吹き飛ばされている。しかも甲板は血で覆われていた。
巡洋艦松島が、大破していた。
鎮遠の30センチ砲を喰らったのだ。
怒りが込み上げて来た。
俺は、持ち場に戻ろうとする。
立てなかった…
みると、白い服は血でジットリと濡れ、赤々とした腸がはみ出している。
産まれて初めて、俺は自分の腸を見た。
不思議と、痛くない。
ただ、悔しかった。
いく時間たったのだろうか?実際は、数分だったのかもしれない。
だが、俺には数日に感じられる時間が過ぎ去った。
怒り、そして悔しさが支配する俺の前を一人の士官が横切った。
「まだ、定遠は沈みませんか?」
『定遠は、戦闘不能になった』
「そうですか。必ずや松島の仇を…」
なんだか嬉しくなり、俺は残りの仕事をこの士官に頼んで、眠りについた。
彼は、二度と目覚めなかった。
勇敢なる水兵
彼の思いは、国を思うその心は、我々に脈々と受け継がれている。
完