「なぁなぁ」-3
「よかったんすか? 彼女さん、とか」
香子の手が俺の腹を撫でてきて、俺は香子のうなじに舌を伸ばす。
「お前はいいのかよ」
俺は疼いてくる欲を抑えもせず、香子の身体に手と舌を這わせていく。香子の吐息が熱くなってきたところで、俺は自分の行為を恥じた。
香子は今、俺と話をしようとしているんだぞ。
なのに、どうして身体を俺は求める?
「んっ」
俺は咄嗟に手を止めた。香子が、慣れない手付きで俺のイチモツを咥えようとしていた。俺は腰を引いて、驚いた香子が顔を上げてくる。
どうしたんすか? そんな顔をしていた。
俺はそんな女の顔を直視できなくて、視線を逸らした。
「性欲のはけ口だろ、これじゃ」
俺は今、どんな顔をしているんだろうか。
二人の女に恋をして、片方を取った。もう片方には見切りをつけて、俺は一人の女を愛そうとしたはずだった。
そんな男は、たった二ヶ月の間で気付いてしまった。
自分が最低であること。
自分のしてきたことの、残忍さを。
俺の言葉に、香子はやはり笑っていた。
その表情に寂しさが垣間見えて、俺は自分の言動を恥じた。そんなこと、彼女は言われなくても気付いているというのに。
「大学で」
俺のモノに指を絡ませながら、香子が言ってくる。下手な手付きが、逆に俺の欲をそそって来る。
「んっ」
つぅと撫でてくる香子の舌は柔らかくて、心地いい。ぴちゃぴちゃと音がして、香子の唾液が俺のモノを清めていく。
微妙な愛撫が、俺の心を揺らしてくる。
「っふ、う」
糸を引きながら、香子の唇が俺のモノから離れていく。その唇は薄桃色で、とても俺のモノが入るとは思えないくらいに、小さい。
「最後の日の、次の日のこと、覚えてますか?」
「うん?」
「朝の、挨拶っすよ」
香子はそう言って、顔を俺から背けた。俺のモノを扱く香子の、表情が酷く気になった。
「宮さんに無視されたじゃないっすか」
俺は思い出していた。
もう会わない。もうここには来ないと言った最後の日。香子は小さく「はい」とだけ言って、俺を許してくれた。
その次の日、俺は決別したんだからと、香子の朝の挨拶を無視したんだ。
その時の香子の、儚い笑みが壊れた瞬間を、俺は見て見ぬふりをした。
「かこ、泣きました」
ずきん。
香子の言葉が、俺の心臓を貫いてくる。分っていたはずだ。
「トイレで、わんわん泣いたんすよ。子供みたいに」
この女は、俺の一言、ちょっとした仕草で笑い、泣く女だということを。それを知っていながら、利用して、今もこうしていることを。
それでも、俺は。
だったらどうして、俺はここに来た?
「だからね」
香子の舌が動きを取り戻して、俺のモノを舐めてくる。さっきよりも強烈な刺激が俺の背筋にまで届いて、俺はたまらずに、香子の頭に手を添えた。
「無視されるよりは、全然いーっすよ」
香子の口が大きく開かれて、俺のモノの先を含んだ。
「あっ、く」
「んぁ、んっ、ぶっ」
小さな香子の唇が、俺のモノをゆっくりと咥え込んでいく。無理だろうと思われた香子の唇が、俺のモノを飲み込んでいく。
「ごぇ、ぶごっ」
「やめろ、無理するな」
俺は止めさせようとして、香子の顔を持ち上げようとした。でも、香子は首を振り、俺のモノから唇を離そうとしない。
呼吸すら出来ない状態で、香子は俺のモノを根元まで飲み込んだ。俺のモノは、香子の喉にまで届いていた。