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愛する人。
【OL/お姉さん 官能小説】

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愛する人。-2

「え…あぁ、この資料の整理を頼む。」
彼は言葉を遮られた事に驚いたようだが、すぐに仕事の顔になった。
「はい。わかりました。山崎くん、ありがとう。もう大丈夫」
「でも…」
山崎くんは心配そうな顔で言った。
「仕事に戻って。」
私は有無を言わさず、山崎くんを仕事に戻す。
「…はい。」
彼は渋々デスクに戻った。
(さて…資料整理。前のデータを弄ればいいのかな。)
私は資料をざっと見て、パソコンを弄り始める。
「…まだ、何か?」
私は視線をパソコンに向けたまま、立ち尽くす要に言った。
「…いや。あとでコーヒー持ってきてくれ。」
彼はそれだけ言うと、きびすを返し副社長に戻って行く。
「…はい」
(その言葉…今は聞きたくなかったな。)
少しだけパソコン画面が滲んで見えた。


「…先輩。これ…」
山崎くんは、要がいなくなったのを確認すると、おずおず近付いてきた。
「ん?」
彼に悟られないように、軽く目の端についた水滴を拭う。
彼はそっと私に手を差し出した。
「何?」
彼が“手を出して下さい”と言ったので、私は素直に手を出す。
彼の手が私の掌に触れた。
「…あ。」
「薬とかそういう物持ってなくて…」
彼が私の掌にのせたものは、一粒のチョコレートだった。
「コーヒー、先輩、ブラックで飲むじゃないですか。」
「うん」
「だから糖分補充の意味を込めて…チョコ…なんですけど…。」
「…うん」
「でも…気持ち悪いのにチョコレートはないですよ…ね。」
「う…ん。」
「…すいません」
「ふふ、ううん。ありがとう。」
私はすぐに包みを開き、口の中にチョコレートを放り込んだ。
「甘…。」
苦かった口の中が、一瞬にして甘くなった。
でもね、山崎くん。
薬なんかいらないよ。私が一番欲しいのは、薬でもチョコレートでもなくて…
要の腕だから。



「…よし」
タンッとEnterキーを押して、私は安堵の声をもらした。
「あ、終わりました?」
「うん、あとは印刷して提出するだけ」
私は印刷したものをもう一度確認すると、副社長室に向かった。
(平常心、平常心…)
深く息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
コンコンッとドアをノックした。
「副社長、先ほどの資料をお持ち致しました。」
「おぉ、入ってくれ」
「失礼します」
ドアを開けると、パソコンに向かう要の姿とスケジュール調整をする秘書さんの姿があった。
(二人っきり…か)
彼はパソコンから目を離さず、私に手を出した。
「ん。」
私は彼の手に、資料を渡す。
いつもならどうしてこっち向かないの?とムッとする所だが、今は向かないでいてくれてよかったと思う。
私、きっと今、情けない顔してるから…
彼は資料にパラパラ目を通し、“ありがとう”と言った。
「はい。」
私が踵を返してその場から離れようとすると、彼は私の手を掴む。


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