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綺麗な人。
【大人 恋愛小説】

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綺麗な人。-3

『山崎くん。』
『は、はい!!』
『何がわからないの?』
先輩はパソコンから視線だけをずらして、俺に言う。
『だから、迷惑かけるのが後輩の仕事。遠慮すんな。』
『あ…はい。』
先輩は丁寧にやり方を教えてくれた。
先輩のお陰で、今日は終電前に家に帰る事が出来そうだ。
『…終わった…』
大きく伸びをして、俺はパソコンの電源を消した。
『あ、終わった?』
先輩は俺よりも先に終わっていて、帰りの支度をして待っていた。
『はい。ありがとうございました。』
『うん。今日はゆっくり寝れるね。』
『はい!!』
先輩は俺の背後に回る。
『上着脱いで』
『…え?』
『いいから。これ先輩命令ね』
『…はい。』
ワイシャツ姿になると、先輩は腕捲りをして肩を揉んでくれた。
『わ…まだ若いのに、肩凄く凝ってる…』
先輩の細い指は、疲労した筋肉を器用に刺激していく。
『あぁ〜…気持ちいい…』
『でしょ?』
凝りやすい所を重点的に揉みほぐし、重かった肩は軽くなった。
『まだ仕事慣れないだろうし、沢山覚える事あって大変だけど…肩に力入れない程度に頑張ろうね。』
『…はい。』
結局、先輩はそれが言いたかったんだと思う。
頑張り過ぎるな、と。

あれからやっと最近、1人で仕事をこなせるようになった。
『稲守先輩!!』
先輩と肩を並べて仕事が出来るように。
『あ、山崎くん。おはよう』
『おはようございます。』

第一印象は最悪。他人にも自分にも厳しくて、本当に嫌いだった。でも気付いた。彼女は本当はとても優しい人。
いつしか憧れの先輩としてではなく、1人の女性として見るようになった。

彼女には笑っていてほしいと思う。
彼女には心配をかけたくないと思う。
彼女には涙や悩んだ姿はさせたくないと思う。

俺は稲守先輩が好きだから。

だから、先輩には笑っていて欲しい。
俺が先輩の彼氏だったら、絶対に不安にさせない。
先輩に、そんな顔させない。
例え、先輩の彼氏が副社長でも、彼女の笑顔を曇らせる奴は許さない。
副社長、
次、先輩に辛い思いをさせたら…
本気で先輩を奪いにいきますからね。

<完>



「お客さん、着いたよ。」
「あ、はい。いくらですか?…え、嘘…!!」
入社3年目、山崎太一。タクシー代を見ても驚かない社会人には、まだまだ遠い。
先輩に押し付けられたお金を足して、やっと払えた。
「…今月、生活出来るかな…」


<おわり>


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