投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

綺麗な人。
【大人 恋愛小説】

綺麗な人。の最初へ 綺麗な人。 1 綺麗な人。 3 綺麗な人。の最後へ

綺麗な人。-2

『そんなもんばっかり食べてると、体に悪いんだから。こっち食べよ。』
彼女は袋の中からプラスチックの器を取り出した。
『何ですか…それ。』
興味を示した俺に、先輩は嬉しそうに話始めた。
『会社の近所にね、美味しいカフェ飯出してるお店があるの。これなら野菜もたっぷり入ってるし、こっちのが健康にもいいよ。』
彼女ははいッと、俺に器の1つをくれた。
『山崎くん、きっと私と同じ量じゃ足りないと思ってさ、大盛頼んできたんだ。』
確かに彼女の器より、大きかった。
『あ…嫌いだった?』
迷惑かなって思ったんだけど…と強気な先輩からは想像もつかないような言葉が溢れた。
『いえ、ありがとうございます。』
『…うん。』
先輩はちょっと照れたように微笑んだ。
(…何、ちょっと…先輩可愛いんだけど…)
不覚にもときめいた。
『最近…ずっと残業してるね。』
先輩は、グリーンカレーを頬張りながら言った。
『え…知ってたんですか…』
先輩お勧めのカフェ飯、本当に美味しい。
特にこのグリーンカレー。今まで食べたカレーの中で、一番うまい。
『知ってるよ。』
だって私山崎くんの教育係だし、とよくわからない解答が返ってきた。
『はぁ…あ。』
チキンサラダのトマトを先輩に奪われた。
『目の下の隈、ヒドいよ。ちゃんと寝なっきゃ、体壊しちゃう。』
何事もなかったかのように、俺のトマトは先輩の口の中に消えていった。
『えぇ。でも仕事終わらなくて…』
先輩は、う-ん、そうなんだよね。とサラダをつつく。
何だ、トマト、自分のあるじゃん。この野郎。
『効率の問題というか…、わからない事を自分で解決しようとしてるからじゃない?』
先輩は背もたれに体重をかけた。ギシッと椅子が軋む。
『え…』
先輩はご馳走様と、手を合わせた。
『わからなかったら、聞いてもいいのよ。そんなに肩張って頑張らなくても大丈夫。何のために私がいると思ってるの?』
先輩はお茶淹れてくるね、と給湯室に行ってしまった。
『…俺のサポートのため…だよな』
先輩は口に出さないけど、きっと心配してくれてるんだろう。
『…。』
今日だって、きっと俺のために晩メシ買ってきてくれたんだろうし。
『…何か、申し訳ないな…』
グリーンカレーは優しい味がした。
『山崎く-ん、緑茶しかないけどいい?』
『あ、は-い。』
先輩に緑茶を渡され、一息つく。
『あと仕事どれくらい?』
『あと…A社の資料整理とB社向けの資料作りです。』
『よし、手伝ってやろう。』
『…すいません。』
『いいのいいの。後輩は先輩を困らせるのが仕事だから。』
先輩は難しい方の仕事を俺のデスクから奪って、自分のデスクで仕事を開始した。
カタカタ、とパソコンを叩く音が二人だけの空間に響く。
(あれ…これって、どうやるんだっけ…)
チラッと先輩の方を見る。
先輩はスマートに仕事を片付けているようで、随分と量が減っていた。
(…邪魔じゃないかな…)
入社当初と違って、女の先輩に仕事を聞くのが嫌だというわけではない。
むしろ、俺よりもずっと大人でずっと賢いって事がわかった。
ただ、今は、俺が質問して先輩の仕事を邪魔するのが嫌なのだ。
(聞いてくれていい…って言ってたよな…)


綺麗な人。の最初へ 綺麗な人。 1 綺麗な人。 3 綺麗な人。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前