好きの気持ち。-1
「好きだって言ったじゃないっ」
泣きながら彼女は言う。
「ずっと言ってたじゃない!それとも、それも信じてなかった?」
―信じられなかったんだ。
なんの取り柄もない僕を、好きだと言ってくれるのが。
「好きに、理由なんてないのよ」
例えばつまづいて転んだときに。
周りの人が笑いながら通り過ぎて行く中で手を差しのべてくれたこと。
例えばつまらない失敗をして。
少しだけ落ち込んだ時に何気ない優しさをくれたこと。
でもそれはきっかけでしかなくて。
きっかけを与えられて、見るようになって。
見るようになったらいつの間にか好きになって。
それはとても自然なことなのだ、と。
そうして愚かな僕はやっと気付く。
彼女は本当に僕の事が好きなんだと。