罪人の塔〜罪深き私の物語〜-3
「…ここはね、動かなくなった僕の仲間達の部屋だよ。」
そういうと、子供はまたペタペタと部屋の奥へと歩きはじめた。
動かなくなった仲間…
恐らくそれは『死んでしまった』ということだろう。この子はきっと、死という存在を知らない。もしくは、それが死だということを理解していない…
私はこの子の後を着いていくことにした。
ペタ………ペタ………
素足で歩く子供の足音は、私の耳に入る唯一の音だった。
奥にはまた木造の扉があった。子供はそれをゆっくりと開けた。
「…………これは。」
その先には、まるで無限に続いているかのような螺旋状の階段が上へ上へと続いていた。その光景に驚いていると、子供がピタリと足を止め、私の方を向き、口を開いた。
「キミは生きている。だけど、生きているという意味を理解していない。ここでの生きているは、キミが知っているものとは違うんだ。僕に付いて来たら、いずれ分かる。キミ自身の感覚で全て分かる。なぜなら、ここはそういう場所なのだから…。」
そういうと、子供は再び階段をペタペタと上がりはじめた。私は子供が言っている意味がいまいち理解できなかった。だが、感覚が逝かれたのか、この階段を吸い込まれるように上っていった。
私の物語は、ここから始まった…
人は知らず知らずに幾度となく罪を重ねている
それさえも罪であることすら、分からないまま………
もうどれくらい上がったのだろう
私はずっと子供に付いていっている。私の『生きる』を確かめるため?いや、ただこうする以外道がないからだ。この冷たい階段一段一段を手と足を使い上がっていった。
途中、私の頭の中から色んな事が飛び出してきた。それは家族や友人のこと、私の置かれていた環境のことなど今まで思い出せなかったことだった。
私は孤独だった。
家族も友達も、優しい反面嘘つきだった
あの笑顔の裏には、利用だとか、邪魔だとか、そんな感情ばかりが詰まっていた
私は誰かに必要とされたかった
寂しくて寂しくて、だけど誰もその涙を分かってはくれなかった