桜咲く頃。-1
石畳の遊歩道に桜並木の葉陰が揺れ、
満開の桜の間から、陽の光と散り始めた花びらが降り注ぐ。
通い慣れた駅までの通勤路、
次々と追い越していく若き企業戦士達の背中を目で追いながら、
間も無く来るリタイアの日への憂鬱に心が曇る。
人生の大半を仕事に費やしてしまった事に悔いは残らないが、
それでも、何か心に去来する空虚感は何なんだろう・・・・・
考える事とは裏腹に、足は義務感を伴って仕事場へと身体を運ぶ。
桜の散る頃、新たな旅立ちが始まる。