桜吹雪-1
桜吹雪の中での出会いなんて、ちょっとロマンチックすぎない?
「…で?何なの、その不細工な顔!」
「だってぇ〜!!」
「うわ〜。はい、ティッシュ」
親友の佐江(サエ)からティッシュを受け取ると私は豪快に鼻をかむ。
そんな私を佐江は隣の席から呆れたように眺める。
「例のクールボーイに告白するって意気込んでたんじゃなかったの?」
「告ったよ!」
「まじで?!」
そう、マスカラとラインが滲んで私の顔がぼろほろになっている原因は、ほんの1時間前―…。
『あ、あの!好きです!!』
『…は?…えッ?!…いや、意味分からないです』
一つ下のバスケ部の男の子に私は意を決して告白した。
なのに答えはそれだけで、彼は友達の呼び声に私の前を去って行った。
「あらら〜残念」
「佐江、冷たい!!」
「だって相手は加奈のこと知らないんだから…そりゃびっくりするんじゃない?」
クールボーイこと、朝晴君(アサハル)との出会いは桜が満開の春。
進路のプリントを提出しようと廊下を走っていると、春風にあおられプリントは見事に窓の外へ飛ばされた。
慌てて階段を駆け降り、外へ飛び出す。
綺麗な桜吹雪の中プリントを探していると、背後から「ねぇ」と声がした。
振り返ると、私の探し物を手に持った朝晴君がいたのだ。
「つまり一目惚れでしょ?」
私の心の中の説明を簡潔にまとめる佐江。
私は鼻をすすりながら窓の外を眺める。
桜の花はすっかり散って、すでに緑の葉っぱが芽を出していた。
その先に見える体育中の朝晴君の姿。
「はぁ〜、やっぱりかっこいい」
まるで私の声が聞こえたように朝晴君がこちらを向いた。
あんな距離から目が合うはずもないのに、思わず顔を逸らす。
そんな私に佐江は不思議そうな顔をした。