投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

桜吹雪
【青春 恋愛小説】

桜吹雪の最初へ 桜吹雪 2 桜吹雪 4 桜吹雪の最後へ

桜吹雪-3

「あの…朝はすいませんでした」

「い、いいの!気にしないで!!」


私は真っ赤な顔を隠すように手をぶんぶんと振りかざした。

夏の風がいたずらで教科書のページをめくる。

その拍子にまたしてもプリントが吹き飛ばされた。

そして見事に朝晴君の足下へたどり着くのだ。


朝晴君は三歩ほど歩いて机の前に立つと、「どうぞ」とプリントを差し出す。

まるであの時のようだ。


「朝は…いきなりの事で驚いてしまって」

「あ…だ、だよね!ごめんね」


私はすでに湯でだこ状態だった。

けれども穏やかで爽やかなハーモニーは続いている。

朝晴君は首にかけているタオルを、汗をぬぐうように顎下に当てた。


「俺、先輩の事、何も知らなくて…。先輩も俺の事なんか全然知らないんだろうと思ってたんで、本当に驚きました」

「………」


その言葉を聞いて、朝晴君があの日のことを覚えてないことを確信した。

私一人が舞い上がっていたのだと思い知らされた気分で、赤面はなかなか元に戻らない。


「朝の態度は本当に謝ります。すいませんでした」

「あの、本当に…大丈夫だから」


頭を下げる朝晴君に、私はおろおろと情けない声を出しながら立ち上がった。

その声は「あぁ、完璧にフラれてしまったんだ」という沈む気持ちの表れだったのだと思う。

私はどうも気持ちが表に出てしまう。

できるだけ明るい声で「わざわざありがとうね」なんて言葉をかけようかと考えてる間に、朝晴君は先に口を開いた。


桜吹雪の最初へ 桜吹雪 2 桜吹雪 4 桜吹雪の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前