チキンのススメ!-19
〈おはよう〉
「糸さん…もう遅いし、家で食べていきませんか?」
あの後少し元気になった、彼女にそう言われた
きっと、一人で帰るのが嫌なんだろう
彼女は、懇願する様な感じだった
時間はもう九時近くで、
普段真面目に帰ってる彼女にしてみれば、プチ家出同然だ
もしかしたら怒ってるかもしれない、
そんな事を気にしてる所が、可愛らしいな、とか思う
まぁ確かに適当な言い訳をつけて、オレが行けば…
彼女の親の怒りを少し和らげれるかも知れない
若い男女がこんな時間まで…という観点で言うと
下手すりゃ余計に怒らせそうだが、
まぁ大丈夫だと思う、
快く甘えさしてもらう事にした
「じゃあ喜んで!」
「…!」
案の定彼女は驚いていた
「行かないほうがいい?」
「!…いや、そんな事!…ただ、初めてそんな快く乗ってくれたんで…」
怖がるのはやめた
やめたと言ってやめれる
モンじゃないけど…
気持ちやめた
今、彼女や…彼女の両親が抱いているのはただの同情だけかもしれないけど、
それは始まりの場所に過ぎない
そこからオレ自身が何かを作り出せばいいんだ
だから、とりあえず
彼女の家に少しお世話になろうと思う
最近はしょっちゅう家に上がらせてもらってる
バラエティ番組のビデオとか、
ドラマのビデオを持っていくと、彼女の家族は喜んでくれる。
という上手く付き合うコツを掴みつつ、
大抵食事中から見始める
そのビデオが終わるまで、少し居座らしてもらったりしている
世話になってばかりじゃ悪いから
出来れば彼女と彼女の親の間に起こるすれ違いを…
オレの介入で緩和出来ればいいと思う
「糸さんおはよう」
元気になった彼女
「おはよ!」
そして、笑ってるオレ
「昨日のご飯…どうでした?」
「おいしかったよ!おばさんによろしく!」
オレ達は、朝一緒に登校するようになった
それは、失ったモノじゃなく…手に入れた光景