チキンのススメ!-11
おはよう
朝起きて、言う相手も、
言われる相手もいなくなった家、
オレは…それがとても悲しかった
でも、外に出ると彼女がいて、朝一番に…
短くても挨拶をしてくれる
その後特に喋ったりはしなくて…それだけだったけど…それがたまらなく嬉しかった
それが彼女の優しさなのは分かってた。
毎朝…彼女はオレが家を
何時に出ても、そこに居てくれたから
どうやら、オレが出てくるのを庭先で待ってくれてるらしい…あの日からずっと、
それは…ただの同情かもしれないけど…
彼女や彼女の家族は、
今でも時々夕飯に誘ってくれる。
それを断り続けてるのは…
気恥ずかしいからってのもあるけど、
同情が証明されるのが怖かった。
本当は、嫌いだけど可哀想だから一緒にいた…そんな風になるのが怖かった。
だから、深く関わらなかった、嫌われたくないから、それが分かるのが怖いから
オレは、毎朝彼女がくれる優しさだけで、十分だったから…
人と人が近づくと、互いにいやな部分が見えてくる
同時に…近すぎて見えなくなる事もある
だから一定の距離を保ち続けた
(だから彼女の気持ちが分かったのかな…
きっと、オレも怖かったんだな
家族のように温かく…
オレを迎えてくれた彼女と彼女の両親
それがただの同情で…
ふとした理由で、オレを嫌いになって
見捨てられるのが…)
『今までは私がいい子にしてたから愛してくれただけで…
私が変わったら、捨てられちゃうんじゃないかって』
彼女が言った言葉を思い出して、
それが頭の中で重なる
(…)
一瞬目をつむる、
眠る気にはなれない…
録画したバラエティ番組も見る気分じゃない
人間ってのは大抵自分を知らない
さっき逃げ出した時と…何も変わっちゃいない筈なのに…
オレは何故か立ち上がり、公園に向かっていた