「お母さん…〜春美視点〜」-1
「冬香!(とうか)久しぶり!」
「春美(はるみ)〜」
ここは山の中にある小さな町。
私と冬香はこの町で育った。
小学生の頃は春冬コンビなんて言われるほど私達は仲が良かったんだ。
でも冬香の就職が決まって冬香は東京に行ってしまったの…
私はこの街で親の喫茶店を手伝ってる。
でも冬香のお婆さんが病気になったみたいで帰ってきて、しばらくはこの街にいるらしい…喜んじゃいけないけど久しぶりに冬香に会えてやっぱり嬉しかった。
「何年ぶり?冬香が二十歳の時に行ったから…もう四年になるんだぁ」
「歳とったねーお互い!」「減らず口は変わって無いね〜」
駅に冬香を迎えに行き、近くのお店でご飯を食べながら、私達は近況を報告しあった。
「春美は喫茶店どう?儲かってる?」
「さっぱりだよ〜」
「家はね、お婆ちゃんがボケちゃってるらしくてね…お母さんもまいってるみたい」
そういえば同じ街にいながら最近おばさんの姿を見てないのに気付いた。
昔はいつも明るくて、ケーキとか焼いてくれて…
「そうなんだ…私に何か出来る事あったら言ってね」「そんなたいした事なぃって!ほら、私もこうして帰ってきたし!」
冬香の笑顔は変わってなくてなんだか安心した。
「じゃまた暇な時遊ぼうようちの喫茶店はいつも暇だし」
「うん!連絡する」
帰ってきたばかりというのもあって、私達は早めに解散する事になった。
この時の私は笑顔で冬香を見送り、これからの生活に胸を踊らせていたのだ。
これから冬香の一家に起こる事も知らずに…………
それから私達は冬香の時間が空く度に買い物をしたり、ご飯を食べたり……
まるで昔に戻ったみたいな日々を過ごした。
ただ、冬香に家の事を聞くとなぜか話を逸らすので、その大変な状況だけが気掛かりだった。
「ごめん春美…明日からしばらく会えないかも」
そんな中、冬香は俯き意味深な言葉を口にしたのだ。
「どうしたの?まだしばらくは街いるんでしょ?そんなに大変なの?」
「ううんっそんな訳じゃないんだけど」
無理に笑顔を作る冬香が痛々しかった。
「ごめんっそうゆう事だからっ」
「あっ冬香」
用件だけ伝えて冬香は去ってしまう。
心配なのですぐ携帯に電話をする……
…………
…………
出ない。
きっと大変なんだな……
今度手伝いにいってあげよう。
心配な気持ちを残しつつ、あまり干渉してもいけないと思い、重い足取りで家に帰った。