就活戦隊ZINZI−Z3〜キャバ嬢ピンク中編 -1
冴えきった目。
寝付けない体質。
たいていこの時間はあたしにとって単なる暇潰しだった。
明日を見つめ直すなんて面倒で怖くてできなかった。
ブラウン管に映し出されるストーリー。
半分も頭の中には入ってかない。
純粋なストーリーなはずなのに、あたしはダサン的に見ている。
…こんな甘い結末なんてありはしない。
…なんでアレを許せちゃうの?
そんなぼやきに返答など返ってくるはずもないのに。
いつから斜にかまえてしまうようになったんだろう。
人は何かを繕いながら生きている。
華やかな水商売の世界でももちろん何かを補填しながら生き抜いている。
それはコンプレックスだったり消えない傷だったり、あの夜の涙だったり…
いつのまにか物語は結末を迎えエンドロールが流れていた。
きっとあたしはこの映画だ…
ストーリーがじゃない。
こうして気にも留められずに流れて消えて逝く運命なんだ。
お店の中でだけ輝いているって信じたかった。
自分に今まで言い聞かせてきただけなんだもの。
もしも本当に輝いているなら一体今のあたしは何?
この満たされない感じも孤独感も感じずに済んだんじゃないの?
言い様のない悔しさがこみあげる。
何かが欠けている。
あたしの大切な何かが?
綺麗な服を着ても
お客さんに誉められても
全然その代わりの穴埋めができないモノがぽっかりと穴が空いたように…
ブラウン管は静かに静寂へと還っていった。
さっきまでのキャストはもうそこには映っていない。
あたしはDVDをケースにしまいながら天井を眺めていた。
遠い昔の記憶がそこには映し出されていた。
小さい頃は
転んでも手を差し伸べてくれる父さんがいた。
そんな暖かい環境をいつしか受け入れられなくなって、勝手に居場所じゃないなんて決めつけて…
逃げるようにして上京した。
あたしはその大切さなんてわかってなかった。
今思えばあたしは家族を必要としていて、きっと家族からもあたしは必要とされていたんだって思う。
一番当たり前で一番失っちゃいけなかった必要。
手放してから気付くまで時間がかかりすぎた。
この世界に染まりすぎてしまった。
いまさら故郷に帰る勇気なんてあたしにはなかった。
ここでは誰も本当にあたしなんて必要としてくれていないのに?
何にこだわってしまっているんだろ?
すべてリセットして帰ればいいだけなのに…
みんなに負け犬だって思われるのが怖く受け入れられない。
向き合うのが面倒臭くて怖かった。
だから逃げちゃっているんだ。
でもいつまで?
ここにいても満たされない。
故郷に帰る勇気もない。
結局あたしはさしずめ袋小路の中に迷い込んでしまった迷子の子猫ちゃんていったとこか。
その時ケータイからあたしのお気に入りの着信音が流れだした。