さくらばな-2
彼の舌が、首筋を這う。
饒舌が、私の胸を満たす。
「貴方に抱かれることで、僕は純然たる芸術を注がれる。貴方の才能を、志を僕は手に入れる。その為なら、囲いものと呼ばれようとどうということはありません」
ねえ、先生。
彼が笑う。
艶然と笑う。
私は皺の寄った掌で彼を引き倒し、撫ぜる。逞しくもたおやかな肌が、肉が指先に弾んで返る。
憎いかな。
まさに妬みであり、羨望である。
私は手荒く、うねる躰を押し開き、肉を裂く。
宗春が叫びをあげる。けれど、それは喝采にも似ていて。
覗く彼の肩には一片、桜のはなびらが、貼りついていた。
(了)