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堕天使と殺人鬼
【二次創作 その他小説】

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堕天使と殺人鬼--第11話---1

 一瞬、何を言っているのか全く理解できなかった。一時停止した思考回路がやっと男の言葉を理解した時、彼――水樹晴弥(男子十七番)は、随分と手の込んだ悪質な冗談だな、と本気で思った。





オリジナル・バトル・ロワイアル

堕天使と殺人鬼 --第11話--
〜悪夢の始まり篇〜





「申し遅れました。」
 男が、なんとなく印象通りの礼儀正しい姿で頭を下げる。綺麗な黒髪が流れるように下がって彼の青白い顔を隠したが、物の数秒で、すぐに体勢を戻した。
「僕は今回、みんなの新しい担任に選ばれました、?ミキハラハジメ?と申します。」
 男はそう言うと、再度黒板に向き直って、今度は真ん中に?三木原肇?と、先程よりもずっと大きな字で書き上げる。三木原肇と名乗る男の指先を目で追っていた晴弥は、別に全くおかしい名前ではないのだが、なんとなく、この彼にはしっくり来ないな――などと、呑気なことを頭に思い浮かべる。これはまだ晴弥が、先程の三木原の言ったことを本気で理解できていない(と言うか、現実逃避に限りなく近い)と言う表れであったが、本人は全くの自覚なしであった。
 三木原は、晴弥たちに視線を戻すと、「みんな、よろしくな。」と言って、青白い頬を僅かに赤らめて、今度は悪ガキのような顔をして笑んだ。こう言う表情も、真面目そうな彼には本当に似合わない。
 未だ呑気にそんなことを思っていると、三木原が再度、訳が分からないと言った具合に呆然としている生徒たち(まあ、中には絶句している生徒もいただろう)をぐるりと見渡して、小首を傾げる仕草を見せた。
 釣られて晴弥も、小首を傾げてみる。
「えーっと……率直過ぎて理解できなかったかな?」
 そう言いながら、彼は苦笑を浮かべた。続いて黒板の端に書かれた?二〇〇七年度プログラム第二十五号?と言う文字を、チョークの先端で二度叩く。その衝撃で真っ白な粉がひらりと、下に落ちた。
 男が続けた。「君たちも授業でやったはずだぞ? 我が共和国に古くから存在する法律、?戦闘実験第六十八番プログラム?って、確か小学校四年生の時から、社会の教科書に載ってなかったかな?」
 言い終わった後、「あれ?」と小首を傾げながら顎に手を添える三木原を眺めていた晴弥の思考は、未だ正常に戻らない。ただ、何かが頭の中で弾けたような感覚があった。
 誰かが、呟いた。
「そ、それって……つまり……」
「そうです。」三木原が教壇に両手を着いて、心なしか息を弾ませて続けた。「嬉しいことに、君たちは今年度のプログラム、えーとー第二十五号に見事当選されました。おめでとう。」
 やる気の全くない、テンポの遅い拍手が三木原の両掌から発せられる。きっと彼の内心はこんな感じ。はいはいはい、おめでとうおめでとう、凄い、凄い。
 この時ようやく――頭の中が先程までとは異なる動きで、働き出した。動き出したその細胞はぐるりぐるりと、まるで渦を描くように回っているようであった。これは所謂、混乱と言うものであったが、晴弥は目を何度も瞬いただけで何かが思い浮かんだかと言えば、そんなことはなかった。いや、自覚がなかっただけで彼は、三木原の言ったことを、思考とは切り離された意識の中でただ、必死に否定したり、肯定しそうになったり、それを繰り返した。だって――だってさ、普通、信じられるか?
 プログラムだぜ? はっきり言って、交通事故よりも、いやむしろ、宝くじよりも当たる確立の低い、あの――あの、プログラムだぜ?


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