『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜茶倉-5
『あ、リリス。ごめんね。時間かけちゃって』
「いいけど、大丈夫なの……?」
『?…何が?』
彩葉ちゃんは憶えていない。さっきの出来事を。
『ほら、さっさと行こ?』
「あ、うん……」
さっきの出来事を彩葉ちゃんに言ったほうがいいのだろうか?そう考えていると、彩葉ちゃんが私の肩に手を置いた。
横を振り向くと、彩葉ちゃんではない…茶倉の顔付きになっていた。
『どうやら、アタシゃあこの娘に乗り移っちまったみたいだ』
「え……!?」
『本当にアタシは死んでたらしい。まぁそんなことはどうでもいいんだけどね。それよりも、アンタ』
急に呼びかけられ、緊張が走る。
「はい…なんですか?」
『アタシはとりあえず、この…彩葉だっけ?この体に害を与える気はない。わかったね?』
「はい」
『アタシは手がかりを探してる。なんでこうなったのかっていうね。だから、アンタにも手伝ってほしい』
手伝うって…私なんかが何を手伝えっていうの?魔術や呪術は趣味もあって多少知識はあるけど、とてもじゃないけど実際には行えないことばかりだ。
『人を捜して欲しいんだ』
意外にも普通な頼み事の内容に、私は何も言えなかった。
『沈黙は肯定とするよ。この体に入ったら、少し…少しだけ思い出したんだ。確かアタシはナイアって女に用があったんだよ』
ナイア……?ナイアってまさか……!?
『ソイツに会えばまた何か手がかりが掴めるかもしれない。手伝ってくれるかい?』
私はナイアと言う名前やニックネームがつく人を一人しかしらない。だけど、その人に合わせることが正解だと私は確信していた。
「……わかりました」
『そうかい。助かるよ』
「多分、すぐ見つかると思いますから」
『……なんだって?』
その時、入口のドアが開く。中に入ってきたのは、今まさに私達が話をしていた人だった。
桜も散り始め、季節が移り変わりをはじめる。
不夜城の仲間たちにも、新たな風が吹き付けていた。