『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜茶倉-4
私と彩葉ちゃんは、お互いに用事が無ければ、学校帰りにこのゲームセンターに来る。ここには、たくさんの仲間がいるから。
この前、サイレンさんに食事を誘われた。だけど、私は恥ずかしくて何も言えなくて、サイレンさんは断られたのと勘違いしてた。
本当は一緒に行きたかったんだけどな……。
はぁ、とため息一つをはいて彩葉ちゃんの方へと振り向くと、彩葉ちゃんの様子がおかしいことに気付いた。
自分の手や髪を何回も眺め、体をぷるぷると震わせている。
「彩葉ちゃん?」
私がそう声を掛けた瞬間だった。
『なんじゃこりゃあああっっ!』
思わず耳をふさぎたくなるくらいの大きな声に、私はそれ以上声をかけられなかった。
『な、なんで……』
震える声を出しながら、彩葉ちゃんがこちらに振り向く。
瞳はいつもの様な愛くるしい輝きではなく、震えがくるくらいの鋭い眼光を放っている。目つきが険しく、どこか大人っぽい顔付きになった。
「い、彩葉ちゃん?」
なにが起こったのかはわからないけど、とりあえず声をかける。すると、とんでもない答えが返ってきた。
『彩葉ぁ!?誰だいそりゃあ?』
声が出ない。だけど、頭の中から一つの考えが浮かんできた。
霊感のある人は、場合によっては通常の人よりも馮依されやすいらしい。
もしかして、彩葉ちゃんも……!
『いいかい!アタシの名前は茶倉(さくら)だ!覚え……うおっ!』
茶倉、その名前を彩葉ちゃんの姿を借りた人が言った瞬間、急に茶倉が苦しみ始めた。
『な、なんだいこりゃあ……。頭が、重く……』
両手で頭を抱え、何度か髪を振り乱すと、ぴたりと動きが治まった。
恐る恐る茶倉の覗き込むと、その顔つきは彩葉ちゃんに戻っていた。