『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜ナイア-1
春。それは、新たな変わり目を迎える季節であり、そして予期せぬことが起きる季節でもある。
「セリカちゃん!お願いだ!しばらく、ウチで働いてくれないか?」
「ふぇ?」
私は人足の少なくなったモノトーンの床をモップがけしていた。
「セリカ、いい働きっぷりじゃないか」
「えへへ、そうでしょ孔雀?」
「はっははは……嘘だ」
「えぇ!?」
「それも嘘だ」
「どっちなの!」
私は今、孔雀と一緒に識さんの経営するゲームセンターで働いてる。なんでも、夜の時間帯に働いていた店員さんが、一気に抜けてしまったらしい。
識さんも必死に止めたんだけど、みんなこの街から出ていっちゃうらしくて無理だったみたい。そこで、偶然その時に店にいた私が矢面に立ったワケ。
識さんは子どものことも考えて、営業時間を削るところだったらしく、大きな被害はなかったが、やっぱり人手は足りないワケで。
とりあえず、週に何回かのペースで夜のシフトに入ってる。
「よーし、セリカ。少し休んでていいぞ」
「ん、わかった!」
今、この時間帯に働いているのは私と孔雀の二人。
本当は識さんも一緒にいるんだけど、今は用があって出かけてる。
私が休憩室であくびをしながら伸びをしていると、孔雀も部屋に戻ってきた。
「今、識が戻ってきた」
「そうなんだ。じゃあ、今日はもう終わりだね」
孔雀は、人前でまったく疲れを見せない。
多忙とまではいかないまでも、しっかり仕事をしている。
しかも、会社に内緒で識さんのお店の手伝いまでしてくれるのだから、見た目通りに、体も心も大きい。
「さて、と……」
そんなことを考えていると、孔雀が何やら自分のバッグをいじっている。すると、中からは……。
「く、孔雀!?なにそれ」
「ん?何って?」
孔雀がバッグから取り出した物は、マスコットだった!しかも、まだ製作途中。と、言うことは……?