『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜ナイア-6
孔雀は私の顔を見ると、にっこりと笑ってまたマスコット作りに没頭し始めた。
孔雀が一息ついたら帰ろう。私は孔雀の作業が終わるのを待った。
「誰の人形が欲しいんだ?」
孔雀の一言が、私は三秒ほど理解できなかった。
「……んえ?」
「だから、誰のが欲しいんだ?」
孔雀は針を止めて見つめてくる。その目が、私に嘘をつかせることを躊躇(ためら)わせた。
「んと……ね…」
嘘はつけない。だけど、本当の気持ちを口に出すのも凄く恥ずかしい。
私は何もはっきりと言えず、ただ口をパクパクと動かすことしか出来ない。
「ああ、ユーズな。わかった」
孔雀がそうひとりごちるのを、私は聞き逃さなかった。
「な、なんで!?」
「あれ、嫌なのか?」
うぐぅ。
嫌なわけない。むしろ大当たりなんだけど、だけど……。
孔雀は、私の悩みを馬鹿にせずに聞いてくれるかな?
「どこが好きなんだ?」
「ん〜と…ね、誰にでも接することが出来るのと、やっぱり優しい所かな」
確かに私はユーズの優しさに凄く惹かれてる。
「だけど、他の女の子とはいてほしくない?」
「うん…」
自分で頷いていて嫌な女だと思うよ。だって……。
「セリカ、ユーズはお前の彼氏じゃあない。」
「うん」
「だからユーズが誰に何をしても、セリカはどうこう言うことは出来ない」
「うん…」
孔雀の言ってることは正論だ。だけど、それを認めることが今の私には出来ない。
ナイアさんは確かに私なんかより数段綺麗だ。それに態度も大人。私が勝てるものは一つも無い気がする。