『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜ナイア-4
「ふぃ〜疲れたわぁ!」
私と識さんが、ナイアさんのスコアに釘付けになっていると、馴染みのある関西弁が聞こえてきた。
入口に目をやると、額に軽いヘッドギアを着けたユーズがこっちに来るのが見えた。
「ユーズっ」
私はたまらず声をかけた。
「おぅ、セリカ。きちんと働いとるかぁ?」
「もっちろん!バリバリだよぉ」
「セリカのことやから、ドジやらかしてゲーム機オシャカにしてる思うたわ」
「うぇ…ユーズまでいじめるよぅ」
ユーズは今、映像関連の仕事をしている。時間も仕事内容もまちまちなので、あまり頻繁に来ることはないけど、仕事が終わったらきちんとここに顔を出しに来てくれる。
ユーズ曰く、《疲れていても、友達のところに顔を出すのは当たり前》――らしいけど、どんなに仕事で疲れていても、ちゃんと識さん達に会いに来るのは偉いと思う。
そこがまたいいんだよね……。
少しばかりの世間話を交わすと、ユーズはビーマニをやろうとして、筐台にいるナイアさんに気付いた。
「…………」
ユーズの顔が止まる、すると急にユーズの顔が変わった。まるで獲物を見つけた獣みたいな、不敵な笑みをナイアさんに向け始めた。
「……っとまぁ、今日はゆっくり話しに来たんやけど、事情が変わったわ。おい、ナイア。ワイと勝負せぇ」
「……ねぇユーズ、久しぶりの挨拶もないのかしら?」
「おう、久しぶりやな。よし、ワイと勝負せぇ」
「はぁ、呆れるわね。何度やっても結果は同じよ?」
「何度やっても同じなんは、お前の作るアホゥみたいな創作餃子(ぎょうざ)の味だけや。今日のワイは今までのワイとは違うで!」
「……今、私の餃子を馬鹿にしたわね?いいわ。いくら挑んでも結果は変わらないってことを思いしらせてあげる!」
二人が悪口を言い合いながらゲーム台に向かうのを、私は呆然と見つめていた。
(……あの二人、仲悪いのかな?)
「……セリカちゃん?」
(けど、だったら二人で一緒にゲームなんかやらないし……)
「セリカちゃん。お〜い」
(そういえば、ユーズが、変わらないのはお前の餃子の味だけやって……)
「セ〜リカちゃ〜ん。上がっていいよ〜。聞いてる?」
(ま、まさか二人は恋人同士で、それで……)