『僕の性格』-1
買物袋を受け取りながら彼女が笑顔で会釈をした、それだけのことだった。たったそれだけのことで僕は落ちてしまった、恋というとてつもなく厄介なものに。
僕は自分でも呆れるくらいに惚れっぽい性格である。でもまさかバイト先の客に一目惚れするとは…。たいしてカワイイ子ではなかったのだが、あの笑顔にヤラレたらしい。不覚である。
その日から僕はまたあの子が来ないかと、待ち侘びることになった。
3日後、彼女は来た!しかし一人ではなかった。僕を心を鷲掴みにしたあの笑顔は、隣の『男』に向けられていた…。
「まだ彼氏と決まったわけじゃない。単なる友達かもしれないじゃないか。」そう自分に言い聞かせ彼女達の様子を横目でうかがう。楽しそうに買物をしている二人…。僕は胸が締め付けられるのを感じた。
やがて二人が買物カゴを僕の前に置いた。サンマに大根にカボスなどなど…。レジを打ちながら僕は、相手に悟られぬよう気をつけながら『男』の顔を見た。背は高いほうではないが、整った顔立ちをしている。ただ彼女に似ていないこともないから兄弟かもしれない、なんていう自分へのフォローを見出だしたりもする。
三日前のように買物袋を差し出すと、彼女も三日前のように受け取りながら笑顔で会釈をした。やっぱり好きだと確信した僕は、体温が1゜cほど上昇したのを感じる。
だが、それも長くは続かなかった。見てしまったのだ、店を出る時に彼女の空いている手が『彼氏』の手を取って握ったのを…。
手を握られた『彼氏』は『彼女』を見てニコッっと微笑み、買物袋を『彼女』の手から取った。まるで一昔前の台所用洗剤のCMのように、二人は仲良さげに帰っていった。
こうして僕の短い恋は終わりをつげた。自らの性格のためにまた一つ、甘酸っぱい思い出を胸に残して…。
-END-