HARMONY〜2話〜-1
キュッ、キュキュッ、キュッ、キュキュッ。
バッシュのスキール音が体育館にこだまする。入学式から2ヶ月・・・。2人はチームにも溶け込み、今やチームに無くてはならない存在になっていた・・・。
「大木!スクリーン来てるぞ!チッ、スイッチする!!」
ガッ!キュキュ!
「神谷!ダブルスクリーンだ!!」
ガッ!
「くそッ!チェック行ってくれ!」
「おぅ!」
「尚人!オレがスクリーンしたんだ。外すなよ!!」
「たりめーだ、バカヤロウ。」
それに対し尚人は冷ややかに返す。
「そう簡単に打たせるか!!」
バッ!180cmはあるディフェンスが尚人のシュートを防ごうと飛んできた。
シュッ・・・。
しかし、そのディフェンスも虚しく尚人の素早いシュートに追いつかなかった。その3Pラインから放たれたシュートは綺麗な弧を描き、ネットに吸い込まれていった。さらにファウルのオマケ付き。
ピィィィィィィ!!
「バスケットカウントワンスロー!!」
「ヨッシャァァァ!!4点プレイ。良くやった3P製造機君。」
歓喜あまった柳太郎がテンションを高くして尚人に近づいた。
「誰が3P製造機だバカヤロウ。嬉しくねぇよ。」
ムッとした表情で尚人は答えた。
75−75
朝霧大附属高校との練習試合。4Qのラスト24秒での尚人3Pは点数を同点にし、櫻高校に勝利を引き寄せた。朝霧大附は県でも強豪と呼ばれるチームである。
フリースロー。
シュッ・・・、パサッ。
「尚人、外してたら今ごろお前はこの俺の手によってバスケットボールにされていたぞ。」
「意味わかんねぇ事言ってねぇで、ディフェンス気合入れろ。まだ24秒あるんだ。」
「へいへい。」
そう言って2人はディフェンスについた。
そして・・・。
ピィィィィィ!!
ゲーム終了の笛がなる。75−76。櫻高の勝利。だが試合成績は異様な記録が残っていた。大里柳太郎、38点。須賀浦尚人、30点(全3P)。その他、8点。バスケットは5人で行う競技ということは知っていると思う。その5人のうち2人で68点を取り、3人は8点。この結果はこのチームが2人だけに頼っている事を表している。つまり、2人のうちの1人でも欠ければその戦力はがた落ちし、勝利することが難しくなるのである。さらにこの櫻高校は3年、2年ともにいない、1年だけで編成されたチーム。その1年の人数は15名。その15名のほとんどが中学でバスケをしていたが実力はお世辞でも高いとは言いがたいレベルである。そのチームで朝霧大附に勝った事はすごい事なのである!!
試合も終わり櫻高のメンバーたちは現地解散をした。そして帰り支度をする柳太郎と尚人に・・・。
「ちょっといいかな?そこのお2人さん」
「ん?」「はい?」
朝霧大附の監督が声をかけたのだ。
「君たち、うちに来る気は無いか?正直な話、櫻高じゃこれから先、優秀な成績を残せると思えない。それにメンバーにも恵まれていないみたいじゃないか。君たちが上を目指す気があるなら、櫻高にいるのは正解じゃないと思うがね。どうだろう?」
「「・・・・・」」
2人は顔を見合し、お互いの意見を悟ったかのように微笑した。
「悪いなおっさん。別にオレらは上を目指してるわけじゃない。」
「楽しみたいだけなんですよ。オレたちは。」
「そうことだおっさん。」
柳太郎はニカッっと笑った。すると朝霧大附の監督はいきなり大笑いし始めた。