HARMONY〜2話〜-2
「あっはは。まったく、とんだお調子者だな、君たちは。」
その言葉を聞いた瞬間柳太郎の顔が真剣な顔に変わった。もちろん、尚人も。
「どーゆう意味だ?おっさん。」
軽くキレた様子で柳太郎が尋ねた。
「言葉通りだよ。楽しみたい、か、まるで中学生だな。恥をかく前に辞めたほうが良い。バスケを。」
「なんだと・・・。」
「・・・。」
「まず須賀浦君、激戦区の大阪代表で全中に出て、その存在を大きくアピールした。そして数々の有名の高校からのオファーが来ていたが怪我をしたため断られた。そして、父親の転勤先となった神奈川に来た。それは大阪から逃げてきたわけだろう。それで入った櫻高でバスケを楽しみたいか。笑わせてくれるな。」
「っ!!」
はっきりわかる。尚人の顔に怒りが浮かぶ。
「そして大里君。全中の決勝で負け、苦い思いをし、須賀浦君同様に数々の有名高校からのオファーがあったが、その高校で自分が通用するのか自信を無くし、櫻高を選んだ。違うか?それであんな思いをしたくないがタメに真剣にやらずにお遊びか?」
「・・・、なんだよおっさん・・・。オレらのストーカーか?」
怒りは柳太郎にも表れていた。
「何とでも言えば言い。私が言えるのは、君たちはまだ高校を知らないということだ。入った高校があまりにも低レベルすぎて、自分の力を過信するほどな。それで楽しみたい、まさに中学生だな。この神奈川では楽しんでバスケをやる奴は恥をかく。」
重たい口を先に開いたのは、以外にも尚人だった。
「言っときますけど、そのオレたちにあなたのチームは負けたんですよ?あなたがオレたちを弱いと言うって事は自分たちのチームも弱いって事を言ってるようなもんですよ。ついでに、恥をかいているのはあなたですよ。」
強気に言った尚人にあっさりと返した。
「そうだな。確かに負けたな。Bチームは。」
「「!!」」
その言葉は2人の顔を一瞬にして曇らせた。
「あれはBチームで実力はAチームの半分も無い。それでも、うちのBチームは決して弱くは無い。そのチームに勝ったことは少なからず評価しよう。それに、こんな事言っちゃ悪いが、櫻高相手にベストメンバーで望むことは、無い。」
「「!!」」
2人はあまりの事にぐぅの音も出ないでいた。
「そんな事にも気づかないとは、私は君たちを評価しすぎていたようだ。それじゃ、失礼するよ。」
そう言い残して朝霧大附の監督は去っていった。
「「・・・」」
残された2人には怒りは無く、悔しさと屈辱と恥ずかしさだけが残っていた。確かに櫻高に入って、自分より上手いのはお互いだけ。後はただの普通のメンバー。自分たちがいれば、このチームはいけるとこまで上がっていけると思っていた。それである程度楽しめると思っていた。それはあの監督が言っていた通り、自分の力に溺れ、過信していたのだ。確信を突かれた言葉は2人を大きく変えた。
「なぁ、尚人。」
まるで精魂尽き果てたような声で柳太郎が言った。
「あんな事言われてさ、黙ってられるほどできた人間じゃないんだよな、オレ。だからよ、オレ、上を目指したい。」
「・・・。」
「本気で。あのくそオヤジをぎゃふんと言わせてやりたい。」
その柳太郎の言葉は、希望に満ちていた。
「ぎゃふんって古いだろ。バカたれ。でもま、オレも同じ気持ちだ。上を、目指したい。」
柳太郎と尚人は火がついたのである。それも、とてつもなく大きな火が。
「目指そうぜ。てっぺん。」
「あぁ・・・。」
続く。。。