「俺…何したっけ?」-1
「ねぇ」
そう言って君は、隣に腰掛けた。
「どうしたの?」
幼子をあやすように、髪を撫でる。
透き通るような肌をしたうなじにキスを落とした。
「どうしたの、ですって?」
そんな俺を、綺麗な二重の目で睨む君。
目元の泣き黶が、色っぽい。
「あ、淋しかった?」
フッと微笑んで肩を抱く。
こうすれば、君は体を俺に委せてくれる。
いつもなら。
「放して」
あ、今日は違うみたい。
機嫌悪いのね、珍しくないけど。
「どうしたの?」
「分からないの?」
うーん…
俺、何かしたかな?
「何かしちゃった?」
まあ、いいけど。
こーゆーのは、笑顔振り撒いとけば大丈夫。
「まだ分からないの?」
こんな至近距離で微笑んだのに効かない…?!
中々手強いのね、今日の君は。でも、俺だって数々の修羅場を乗り越えてきたんだ(浮気とか浮気とか浮気とか…)。
こんな女子になんぞ、敗けぬ。
「最近、構ってあげられてなかったもんね」
今日最高の、微笑みビーム。
淋しがり屋だもんね、君は。
ま、そんなトコも可愛いよ?
「違うわよ」
あら?
じゃあ、これかな?
「夜まで待てないとか?」
いっぱい愛して…
「今の貴方とは嫌」
うわ、結構傷付いたわ。
「じゃあ、何なのさ?」
「分からないの?」
「分からんよ」
だって、俺なんかしたっけ?
「お前だけだよ?」
浮気なんかしてないし。
「何がよ?」
何だろ…
何だろ…
いや、俺もうギブだわ。
「俺、何した?」
微笑みも忘れて、今日最高の真顔で聞いた。
そんな俺に呆れながら、君は俺の頬をつねった。
「いひゃっ?!」
そんな俺の可哀想なそれを聞いて、君は満足そうに笑って言った。
「私のチキンラー〇ン、食べたでしょ?」
あ…。
●End●