就活戦隊ZINZI−Z3〜キャバ嬢ピンク前編-1
消えそうなくらいの胸の中の願いをそっと抱き締めながら……
リップを塗りなおした。
凛としていなきゃ何かに負けちゃう。
それはうわべの装った造られたアタシに?
それともこの業界に身を埋めてしまって抜け出せない本当のアタシに?
アタシは桃。
現在出勤中。
『STARS』
これが今アタシが待機しているこのお店。
華やかな業界だって言われるけどそんなに楽じゃないの。
お客さんの相手するだけじゃ稼ぎも足りない。
夜のお仕事だから気を抜くとお肌にも悪いのよ。
そんなこんなでもう二年。
アタシも22になった。
何がしたいのか今はわからない。
でもここでは誰かがアタシを必要としてくれる。
こんなアタシに癒しを求めに来てくれる。
それが最初はうれしくって仕方なかった。
だけど最近は……
アタシは何がしたいの?
アタシの心に秘めた消えそうな炎を見つめてみた。
「サクラちゃん9番ボックスに入って。」
さて……
アタシはそんな思いを何処かにしまい込んで凛と歩いていく。
本当のアタシなんてココじゃ求められていないのだから。
笑顔って心から自然に出てくるはずなのに…
アタシの心は泣いている。
帰りの送迎のバスの中では専らアタシは携帯をいぢって過ごす。
誰かと繋がりがほしいんだ。
本当のアタシを見てほしいんだ。
もちろん営業メールも忘れない。
サービス業なんだからいつも造ってなきゃいけないんだとマネージャーさんに入店したあの日に教わったから。
「サクラちゃん今日も楽しかったよ!また来週行くからね。」
「サクラちゃん今日はなんか元気なかったみたいだけど大丈夫?」
そんな他愛ないメールを受け取り送り返す度に何かがすり減っていく。
大切な何かが。
家の前に着いて挨拶をして車を降りる。
今日の桜色のドレスもなんかくすんだ色として瞳には映る。
また今夜も寝れないのかな?
そう最近アタシは不眠症になりかけている。
一人では広すぎるこの八畳の部屋にはもちろん迎えを待っていてくれる人などいない。
冷蔵庫から缶ビールを取り出してグッと飲み込んだ。
延滞しているけどまだ見ていなかったDVDを上の空で眺めていた。
アタシは消耗品。
チクっと何かが傷んだ。