COMPLEX -act.1--4
「けど、その後、橘とかと喋ってるの見て、『なんだ、普通に喋れんじゃん』って思ったら、俺とも普通に喋って欲しいって思うようになって……」
声はだんだん小さくなっていく。
「その……俺は橘みたいじゃなくて口下手だけど、こわがんねぇで喋って欲しい……んだけど……」
「こ、こわがってないよ!き、緊張……しちゃってて」
麻生くんには特に。
好きだから。
「こ、これからは、ち、ちょ、ちょっとずつで……も、喋れるように、その……が、頑張る、から、しゃ、喋りかけて……くれる?」
こんなに長く喋れたのは初めてだった。
反応のない麻生くんをチラリと見る。
「……マジで?」
麻生くんはビックリしたみたいな顔をしていた。
それから笑って、「ありがとう、よろしく」って小さな声で言った。
あたしも笑って、心の中で言った。
『こっちこそ、ありがとう』って。
『大好きよ』って。
ねぇ、あたし、チビで太ってるし、引っ込みじあんの緊張しいだし、だけど、麻生くんのこと、好きでいていいかな?
あなたと喋れるようになったら、ちゃんと告白できそうな気がするよ。
きっかけ一つで、勇気って沸いてくるんだね。
ありがとう、あなたのおかげだよ。
ありがとう、大好きよ。