恋に似たもの-3
「なにこれ、さっきのテスト?なんで?」
「いいじゃん、お餞別」
笑って手を振って、歩きだしたわたしの背中に、岩ちゃんの声が届く。
もらっとく、って。
いつもの、「は」を三回の笑い声と一緒に。
終業式までは、まだ日がある。だから、きっとまた、顔はあわせるだろう。
だけど、あの場所で、あのベランダと花壇で、会うことはもう二度とない。
岩ちゃんがいなくなるのも、結婚するのも、なんだかすごく、腹が立つ。
置いていかれるような、そんな気がする。
でも、仕方ないから、それでいい。
「全然理解できなくて、一生無理かもしれなくて、だけど好きで仕方のない」
それを、岩ちゃんが恋のようだと言ってくれるなら。
岩ちゃん。
わたしの孤独を埋めてくれた人。だけど、恋は孤独なのだと、そうも教えてくれた人。
そんな約束された孤独を行く日々は、なぜだかとても暖かかったよ。
完