暗がりにて-1
僕はどうしてここにいるのか。
どうして生きなくてはいけないのか。
どうして人の罵倒にまで堪え、破壊してはいけないのか。
真っ白いこの部屋で、柔らかいソファに抱かれながら白衣の男に教えられてもわからなかった。
ここは病院らしい。
僕はここが大嫌いだ。
僕は僕は僕は・・・。
僕は誰?
医者が一人増えて、催眠術師のまね事をし始めて・・・。
意識が遠のいた・・・。
ぶつんっ!
どうして?
薄暗がり・・・。
僕は誰だっけ?
ホントに暗いな
僕は僕は僕は僕は・・・
僕はお父さんとお母さんに愛されていた。とてもとても大切に育てられた。
僕は幸せだった。
でも、いつからかお父さんは家に女の人を連れてくるようになった。
化粧が厚くて、香水の匂いが鼻の奥を痺れた。
僕はその人が大嫌いだった。お母さんに悪い魔法をかけた魔女だから。
お父さんを僕とお母さんから奪った悪魔だから。
お父さんがいなくなってから、お母さんは変わってしまった。
お母さんが僕にいつもご飯を作らなかったり、いつも暴力を奮ったり、剃刀で僕の皮膚に切れ目を入れて指で開いたりしたから、身体が満たされなくて、僕の中で何かが壊れて、何かの破片が流れ出て、それで僕は壊れてしまったのかもしれない。
僕はお母さんを殺すことにした。
魔女がかけた魔法でお母さんは魔女になってしまったから。
お母さんは柔らかいベッドで安らかな寝息を立てていた。
その光景がとても腹立たしくて、お母さんが抵抗しないようにベッドの柱にテレビのコードを使って両手足を括りつけた。
まるで最初からそうできるように計算されてたみたいにベッドとお母さんの手足はきちんと繋がれた。
僕は少し満足して、お母さんが起きるのを待った。
・・・起きない。
枕元に睡眠薬と水。これでは起きないだろう。
待ってるのも時間の無駄みたいだったから僕は窓辺の花瓶を掴んでお母さんの頭の上に落とした。
ガシャンという音がして、お母さんの額が裂け、血と汚れた水でお母さんの顔がびしょ濡れになった。
すぐにお母さんは目を覚ました。
苦痛に顔を歪ませて目を開き、僕を確認すると嫌悪と恐怖に裂けた額に皺を刻んだ。
『何の真似だ!恩知らずめ!』
テレビのコードがぎぃ・・・と奇妙な生物のように鳴いた。
お母さんは僕を苦しめた両腕をばたつかせて憎らしげに僕を睨んでいる。
見ているだけで腹がたった。
この腕が、僕の感情を奪ったんだ。
そう考えると僕は胸が苦しくなるのを感じた。
断ち切りたかった。この想いも、お母さんの腕も。
僕は倉庫にあった錆だらけの鋸を片手ににぎりしめていた。お母さんもそれに気がついたらしい。
『な、何するきだい!?止めて!嫌だ!!』
背中をぞわぞわと何かがはい回るのを感じた。
心臓にも同じものを感じる。
僕は、鋸の刃をお母さんの手首に当てた。