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我が人生一片の悔いあり
【コメディ その他小説】

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我が人生一片の悔いあり-1

「ふあぁー、ねむ。」
クラブを終え、俺は帰り道をぶらぶらと歩いていた。駅から家までぎりぎり歩きでいけるという微妙な距離感が最近限りなくうざい。
「あ〜、腹減った。」
ただでさえ17歳の腹というアメ車なみの燃費の悪いものを持ち、さらにクラブ帰りということで俺の腹はさっきから盛んに雄たけびをあげている。昼飯から何も食べていないのだ。そりゃわめくのも当然だ。
「…コンビニでも寄るか。」
ちょうどコンビニが見えていたので俺はコンビニで何か買うことにした。家に帰れば夕飯があるのだが、頭では金の無駄遣いとわかっていてもついつい買い食いしてしまう。こればかりは止められない。
『いらっしゃいませ〜。』
俺の無愛想な性格じゃコンビニでバイトは無理だな。こういう風に、例え仕事とはいえ挨拶が出来る人を俺は尊敬する。などと馬鹿なことを思いつつも俺は何を買うか考えながら店を歩く。
「パンにするか。それとも…ん?」
なぜかレジにいる店員に目がいった。正確に言うと店員の隣にある肉まん入れだ。正式名称はわからない。
頭の中に肉まんを頬張る自分の姿が浮かぶ。噛んだ瞬間口の中に肉汁が広がる。ほんのり甘い皮と熱々の肉の絶妙なハーモニー。飲み込む瞬間のあのなんとも言えない幸福感。
こうなるともう止まらない。俺は手に持っていたカレーパンを元に戻して、レジに向かった。
「肉まん一つください。」
『はい。』
よく見ればかなり可愛い店員だが俺の頭の中は肉まんのことでいっぱいだ。他のことなぞどうでもいい。
『袋にお入れしなくていいでしょうか?』
「はい。」
当たり前だ。環境問題とかではなくもはや袋から取り出す時間も惜しい。さっさとよこせってんだこの野郎。
『どうぞ。』
俺は店員に金を渡し、コンビニから出た。
「うっしゃー、食うぞー。」
肉まんを食うにしては必要以上に気合をこめながら俺は肉まんにかぶりつこうとした。が、そうはいかなかった。
コンビニの前の道路を渡る信号が点滅していた。別にそれだけなら何の問題も無いのだが、この信号に関しては大問題だ。
とにかくこの信号は一旦赤になるとやたら長い。待ってる間に暇だからストレッチでもしようかというぐらい長い。おまけに青になっている時間は短い。憲法に書かれてる平等なんざどこ吹く風だ。とにかくあきれて物が言えないのを通り越して文句が出まくるというぐらい長い。この信号のせいで泣く泣く遅刻届を取りに行くことになったのも一度や二度ではない。
その信号が点滅している。のんびり肉まんを頬張りながら慌てて渡る人たちを眺めるのがベストなのだが、ここで渡らないと何か負けのような気がする。あの上から目線の信号野郎に馬鹿にされているようだ。『てめぇみたいな人間は俺を待つのが当然なんだよ。』と。
俺は肉まんとカバンをしっかり持って駆け出した。

異常に気づいた時にはもう遅かった。俺は経験したことのない衝撃を全身に受け、はね飛ばされた。
周りの風景がスローモーションで流れる。なぜか冷静に車にはねられたと俺は理解した。走馬灯も見えるかと思ったがそれは見えなかった。何か損をした気分だ。
地面に叩きつけられる。体を動かそうとするが指一本動かない。目を開けようとするが暗いままだ。
俺は死ぬのだろうか。17歳、もう少し生きたかった。そんなことを思っていると、俺の頭の中をあることがよぎった。


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