我が人生一片の悔いあり-3
あの事故から一週間、俺は暇な入院生活を送っていた。足を骨折しているので病院の中を動き回ることもできない。だからとてつもなく暇だ。
思えば何であんなに肉まんにこだわったのか。肉まん…そういえば肉まんは何の肉なんだ?豚まんがあるのだから牛肉だろうか。じゃあ鶏肉の場合は鶏肉まんか。鶏肉まん…声に出したら何かのヒーローか怪獣みたいだ。どちらにしろ弱そうだ。平和を守ることも壊すこともできなさそうだ。
などと非常に無意味なことを考える。ここまで暇だと勉強でもしようかと思ってくるから不思議だ。普段だったら金を積まれたらやってやろうというぐらいの俺でもだ。
とりあえず苦手な英単語でも、と思って本に手を伸ばそうとしたら朝飯の時間がやってきた。どうやら俺はよほど勉強に縁がないらしい。
『肉まん君、朝ごはんよ。』
あの一件以来、俺の病院内のあだ名は肉まん君になった。非常に不本意だが仕方ないと言えば仕方ない。意識が戻って最初の第一声が『ここは?』でも『今はいつ?』でもなく『肉まん…』なのだ。そりゃあだ名も肉まんになるというものだ。
『はい、どうぞ。』
「…バナナとヨーグルトか。」
『あら、バナナとヨーグルトが嫌い?』
「いえ、好きですよ。肉まんと同じぐらい。」
『あら、じゃあ良かったじゃない。大好物が二つもあるんだから。』
「…そうですね。」
『じゃあ残さず食べてね。』
小学生の時、先生から嘘をつくのはいけないと教えられたがこの場合もそれにあてはまるのだろうか?
俺はバナナを齧りながら、そんな生産性の無いことをまた考え始めた。