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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第−2話・仁義なき恋愛〜後編》-1

「さて、後編です」
「後編は再会ということですが、どうなんでしょう?功刀先輩」
「再会というか…もう赤い糸に定められた運命みたいな感じなんだよぉ〜♪」
「………ちょっと大丈夫ですか?」
「何が♪」
「………大丈夫じゃなさそうね」
「では後編の始まりです」

───ガシャン。

《第−2話・仁義なき恋愛〜後編》

◆◇◆◇◆◇◆◇

日ノ土高校、2年生のある教室の中。
今は授業と授業の間の休み時間であり、友人との会話に勤しむ者、次の授業の予習や、前の授業の復習に励む者など、各自が好きなように過ごしている。

「眠っ…」

千代子は机に片肘を突き、そこに顎を乗せたまま小さく呟いた。

「ふあぁあ…」

さらに大欠伸。
眠気の原因は判っている。
毎日のように街に出かけ、微かな記憶を頼りに、約半年前のあの日、助けてもらった人物を探し出そうとしていることだ。

(…何処の誰なんだろう?)

千秋郎を始めとした事実を知っている者達は皆、『どんな困難な依頼でも解決してくれる者』とだけ答え、それ以外については口を閉ざしていた。

(ちょっとは教えてくれたっていいじゃねえかよ…)

そんな思いが脳裏をよぎる。だが、同時に仕方ないかという感想も浮かぶ。
忍装束のような特異な格好をしているのだ。
そう易々とは正体を明かせないのだろう。
それでも、千代子は会いたかった。
あの時、銃を持った相手にも臆すること無く立ち向かい、自分の身を助けてくれた謎の人物。
そんな空想の中だけだと思っていたヒーローに、千代子は憧れや尊敬の念を抱いていた。

「はぁ…」

でも、見つからない。
溜め息を零し、空いている方の手で鞄を探った。手に固い物が触れる。
取り出したものは板チョコ。
包みを開くと、口に咥えて割った。
口の中でチョコが溶け、甘味とほんの少しの苦味が広がる。
元来、千代子は甘い物は好きではなかった。
しかし、あの日貰ったチョコレートは食べたことがないくらい美味しく、今ではチョコレートは千代子の大好物となっていた。
また、好きになった理由はチョコを食べるとあの笑顔と温もりが浮かんでくるからでもある。
板チョコを囓りながら千代子は壁に貼られた時間割りに目を向けた。

(げっ…次、英語かよ…かったるいな…)

千代子は席を立った。
始業まで残り五分程。

(探しに行くか…)

千代子の脳内で『英語<捜索』という図式が成り立つ。
チョコの残りをポケットに押し込み、鞄を持って教室を出た。
廊下を過ぎ、L字になった角を曲がろうとした時だった。


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