刃に心《第−2話・仁義なき恋愛〜前編》-7
「爺ちゃん!」
千秋郎はそのまま千代子を深く抱き締めた。
「い、痛いよ…爺ちゃん…」
「良かった…」
苦笑いを浮かべる千代子に対し、千秋郎はただ一言だけ呟いた。
「ほ、ほら…もういいだろ!みんな見てるし…」
「…そうだな」
五分以上抱き締めた後、千秋郎はコホン…と咳払いをして千代子を離した。
「あの、助けてくれて…ありが…」
振り返った先にはもう誰もいない。
つい先程まであった温もりが懐かしい。
「……ありがとう」
千代子は小さく、心の底から礼を言った。そして、千秋郎に背を向けたまま問い掛けた。
「爺ちゃん…今の人…誰?」
◆◇◆◇◆◇◆◇
───ピッ!
「と、まあ出会いはこんな感じだったわけですね?」
「そ〜なんだよぉ〜♪この時の疾風って、すっごくかっこよくて♪強くて♪優しくて♪暖かくてぇ〜♪」
うふふふ…と笑い、千代子が身を捩りながら嬉しそうに語り出す。
「てか、先輩何気にすごい経験してますね」
「私も流石に誘拐は無いしな〜。実弾で狙われたことはあるけど。
シイタケ先輩はそういう思い出は?」
「俺のような一般市民にそんな裏社会的な思い出があるわけないだろ」
「でな!疾風のかっこよさったらもう…♪」
「つまらない男…」
「そんな危険な思い出が詰まった男にはなりたくない」
「女はちょっと危険な香りがする男に惚れるものよ」
そろそろ、収拾が付かなくなって参りましたので、後編へと移りたいと思います。
では、後編でまたお会いしましょう。
後編へ続く…