誘惑 〜childhood friend〜-3
「あぁそうかよっ!?」
それを聞いた亮の態度が、豹変した。
「人がこれだけ頼んでるのにッ……畜生ッ!!」
ぐちゅっ
「ん!!?」
無理矢理のディープキス。
私は何が何だか分からなくて、硬直していた。
「った……!!」
潰されそうなくらいに力強くおっぱいを掴まれた痛みで、硬直が解ける。
「俺はよりを戻したいんだあっ!!受け入れろよ、俺おぉッ!?」
「やッ……止めてええええっっ!!」
叫んだけれど……体格に差がありすぎて、力で敵うはずがないのは分かり切っていた。
「畜生ッ!!畜生ッ!!俺を、受け入れろよおぉっ!!!」
痛みと恐怖で、私は泣き叫ぶ。
「ったい!!やだ、止めてえっ!!」
濡れてもいない場所を指でぐちゃぐちゃにされ、私は必死で体をよじった。
バンッ!!
「俺の女に、何してやがるッッッ!!!」
ばぎゃっ!!!
私にのしかかっていた亮の目が、ぐるんと裏返った。
「……翔太……?」
私は呟く。
肩を激しく上下させ、握り締めた傘を呆然としながら見ているのは……翔太だった。
「そいつが……家に入ってくの見て……出て来ないから……っくしょ……!」
気絶したらしい亮を私の上からどけ、翔太は私の頬に触れる。
「……平気か?」
「……うん」
その手が、優しくて……。
「……何で泣くんだよ」
「って……恐かった……もの……」
翔太の手が、伸びて来て……。
私は、抱き締められていた。
「……翔太……?」
「こんなヤツと……より、戻すのかよ……!?」
「な……んで……そんな事言うの……嫌いなんでしょ、私の事……?」
抱き締める力が強くなる。
「違う……」
その声は、苦しそうだった。
「っきだ……好きだよっ!ずっとずっと、好きだったよ!!」
自分の部屋の椅子に腰掛けて……私は、ため息をついた。
頭の中が、ぐちゃぐちゃ……だった。
翔太が……私を好きだった……。
結子ちゃんが言った通り、翔太はもう……オトコ、なんだ……。
いっちょ前の……。
―――ふっ
ため息をついて、私は行動を始める。
行き先は、窓。
閉めていたカーテンを開けると、手の届く場所にカーテンの閉められた、隣家の窓。
――翔太の部屋。
窓を叩く。
すぐにカーテンが開いて、翔太が顔を覗かせる。
「……何だよ」
翔太は泣きそうな顔をしていて……私は、胸が締め付けられた。
「分かってる……俺の方がガキなのは変わらないし、そういう対象じゃなかった事は、この一年でイヤってくらい思い知らされたからな」
だから……顔を合わせる度に、私の事を罵ってたの?
「……もうちょっと窓開けて。そっち行くから」
「え?」
翔太が何か言うより早く、私は一歩を踏み出した。
慌てて横にずれ、スペースを空けてくれる翔太。
ぽふっ
私の体は、スプリングの効いたベッドの上へ着地する。
「……守ってくれて、ありがとね」
あの後……気絶した亮の事は玄関の外に放り出して、私達は別れていた。
自分が仕出かした事の重さは分かっていたようで、亮が玄関のチャイムを鳴らす事もなかった。
「…………わざわざこっち来なくても、そんなん言えるだろ」
そっぽを向いて、翔太は言う。
そんな素っ気ない態度も翔太の気持ちを知ってしまった今となっては、可愛い。
「うん、そうだね。だけど、これはできないじゃない?」
私は翔太の胸の中へ飛び込む。
「わわわわわわわわわ」
「きゃあっ!?」
翔太はバランスを崩し……私達は、ベッドの上に倒れ込んだ。