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誘惑
【幼馴染 官能小説】

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誘惑 〜childhood friend〜-2

「だからもぉ……ヤだよおぉ……」
翌日。
私はファーストフードで、友達の澁谷結子(しぶや・ゆうこ)ちゃん相手に愚痴っていた。
結子ちゃんは小学校以来の親友で、私と違って美人で大人っぽくて……容姿はまるで正反対。
でもそのせいなのかな?私達は、気が合った。
今も私の愚痴りを、にこにこといかにも楽しそうに聞いている。
「分っかんないよぉ……あの根性悪……」
「あたしは、分かるけどなぁ」
結子ちゃんは、目元を微笑ませながらそう言った。
「……何がどう?」
私が食いつくと結子ちゃんは焦らすようにジンジャーエールを啜り、喉を潤す。
「ん〜?相沢君はさ、年下でも男の子な訳よ。オ・ト・コ・ノ・コ」
何もそんな区切って言わなくても……って、はいぃ?
「何それ?翔太が男の子なのと、何がどう関係があるの?」
私がそう言うと、結子ちゃんは苦笑した。
「幼馴染みのお姉ちゃんを知らない男に盗られたのが悔しくて、冷たく当たってたんじゃない?」

ブゥ!

フライドポテトを吹き出しかけてしまい、私は慌てて口を押さえる。
「っな……!?」
「違う?」
にこにこ顔を崩さぬまま、結子ちゃんは言った。
ヤツが……あいつに嫉妬ぉ!?
……はっ……まさかぁ。
人の顔を見る度に罵ってくれるヤツが、私を取られたからってヤキモチ焼いてる?
「ウソウソォ!そんなん、ありっこないって!」
ぶんぶん手を振りながら、私は言った。
アイツ、そんな可愛いキャラじゃないしさ。
「だといいけどねえ。ま、どう転ぶか分からないから、面白がって見物させて貰うわ」


「櫻〜?見付かった〜?」
のんびりした結子ちゃんの声に、私は焦った声を返した。
「見付からないぃ〜……!やっぱりうちに忘れて来たみたいぃ……」
あああああぁ〜、教科書ぉ〜……。
「しょうがないわねぇ……あ、そうか」
結子ちゃんは教室の外に出て行くと、すぐに戻って来た。
その手に、教科書を持っている。
「隣のクラスから借りたわ。後で返してあげてね」
「結子様ああぁ……」
ありがた〜く教科書を借りた私は裏表紙に書いてあった名前を見て、硬直した。
教科書の持ち主の名は、花井亮(はない・りょう)……私の、元カレだ。
一体何のつもりで……?
聞いてみようか迷ったその時、先生が入って来たのでタイミングを逃してしまった。
――授業が終わるのとほぼ同時に、私は教室を出て隣のクラスへ行く。
「りょ……じゃない、花井君」
机の上へ、教科書を叩き付けるように置いた。
「どーもありがと!」
亮が口を開くより早く、私は踵を返す。
「ッ……ちょっと待てよ伊武っ」
気楽な調子を装って、亮は私の肩を掴んだ。
付き合っていた事は限られた友達以外誰にも秘密だったから、気は使っているんだと感じた。
「話したい事がある……部活終わったら、うち行くから」


「……で、話したい事って?」
うちの玄関でガマガエルよろしく平身低頭している亮を前にして、私は冷たい声を出した。
「頼む!やり直したいんだ!!」
うちに私以外の誰もいないとなれば、こういうポーズも平気でするのね。
「……」
「チャンスを、くれよぉ……!!」
私は、ため息をつく。
「ずいぶん……都合のいいお願いね」
「……分かってる……けど、やっぱり櫻が忘れられない……」
「ならどうして浮気したのよっ!?」
かっとして、私は叫んだ。
「浮気したのも『別れよう』って言ったのも、全部あんたでしょおッ!!?」
私……亮が望む事は出来る限りしてあげたよ?
デートも、SEXも……痛いけど、頑張って……。
浮気相手は結子ちゃんみたいに、美人で大人なタイプ……私と、正反対。
『別れよう』と告げられて泣いた私に、亮は何も言わずに背を向けた。
なのに、いまさら……!いまさら……っ!!
「……ったし……亮の、何なの!?」
自分が泣きじゃくっているのに気付かず、私は叫ぶ。
「付き合ってると思ってたのは私だけで、都合のいい女!?」
後はもう……言葉に、ならなかった。
へたり込んで泣く私を、顔を上げた亮は抱き締めて……。
「ごめん……」
「謝るくらいなら浮気しないでよおッ!!」
もうヤだぁ……亮と一緒にいるの……。
「亮と一緒にいるの……疲れた……やり直したくなんか、ない……」
頭がぐちゃぐちゃになって混乱していた私は、思い付くままに……素直な言葉を紡いだ。
――別れの、言葉を。


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