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誕生
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誕生-2

「友達なんていない…」
「ハハ、ますます俺の少年時代のみたいだな」
そんな俺の暗い台詞をオッサンは笑い飛ばした。
下らないとでも言うように。
そんなオッサンの姿に俺はムッとした。
「あなたにこの辛さがわかりますか?」
「だから言っただろ。俺も昔そうだったって」
笑顔のまま、彼は続けた。
「必勝法教えてやるよ」
必勝法、そんなものあるのだろうか。
何度も俺は考えた、だが、何も答えが出ることはなかった。
だから今さらそんなものがあるとはにわかに信じられなかった。
でも
「教えてください」
友達が欲しかった。
話がしたかった。
テレビの話でも恋愛でも勉強でも将来のことでも。
何でもいいから話がしたかった。
「じゃあ死ね」
意味がわからなかった。文字通り意味不明。
冗談にしてはあまりにキツく、苦しく、悲しかった。
だが、正論だ。
死ねばきっと楽になれる。友達も出来るのかも知れない。
「死ぬのですか」
「そうだ。今日たった今お前という人間は死ぬんだ。次の瞬間、お前はお前じゃない、違うお前だ」
そう言って、パンとオッサンは手を叩いた。
もちろん俺自身に何も変わることはない。
俺は俺のままで、俺で有り続けていた。
でも一つきっかけが出来た。
「人は変われるんですね」
よっ、とガードレールから降りると、オッサンは俺の来た逆の方向へと歩いて行った。
そして背中でこう言った。
「変わるんじゃない。人間は死んでんだよ、そして何度でも生まれ変わる、そういう生き物なんだ」
いつしか霧は晴れていた。
眼下に見える片田舎の町では今日も人間が生きていた。
眩しく暖かい初夏の日差しが、峠の緑と町とそして生まれたての俺を照らす。
「うぉぉぉぉぉ!」
俺は赤ん坊の産声とは似ても似つかない雄叫びを初夏の馬鹿デカい入道雲に向かってあげた。


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