夜明けの雨-3
遥か眼下には街の微かな灯り、空には星が見えるけど、自分の周りは真っ暗闇で懐中電灯が無ければ自分の手さえ見えない。
その暗闇の中ひたすら山頂を、そして夜明けを目指して歩いて行くんだ。
山の頂きで見る夜明けは本当に美しい。
薔薇色って本当にあるんだって知ったよ。
あの美しい夜明けを見ることが出来るなら、暗闇の中を歩くことも耐えられると思った。
必ず夜は明けるんだから。
いつか、一緒にあの夜明けを見に行こうか 』
薄闇の中なのに、貴方の笑顔がはっきりと見えた。
あの日の朝、生きることを選んだ父も、こんな顔で空を見上げていたのかもしれない。
この雨は必ず止む
この夜は必ず明ける
愛すること、生きることの果てに何が待っているのか私にはまだわからない。
それでも、微かな光や温もりを頼りに私たちは今日も歩き続ける。
夜明けをめざして……
『夜明けは、まだだよ
もう少しおやすみ』
貴方の言葉で私はまた闇に落ちていく。
でも、今度の闇は優しくて温かい。
こんな闇なら落ちてもいいかもしれないと思った。
― end ―