返せなかった赤い傘:後編-4
頭の中が白くなってきた
限……界……なのか…
ガタンゴトン…
ガタンゴトン…
電車の音が聞こえてきた。
あぁ、着いたんだ…
よかった…
よかった…
俺、生きれなかったよ…
最後まで生きれなかった
まだ生きたかった
最期のさよならが言えなかった
傘、返せなかったな…
とある日の午後…
駅の整備をしていた新入りが、大事そうに赤い傘を握り締めたまま横になっている男性を見つけた。
男性はとても幸せそうな顔で眠っていたそうだ…
《完》