ペア-1
―ピピピピッ
布団から男の整った綺麗な指が目覚まし時計のボタンを押す。
ボタンを押した後の指が布団の上に置かれる。
そしてまた時計に指が動く。
どうやら時間を確認したらしい。
時間を確認した男は、時計の隣に置かれた眼鏡を取り布団から出た。
寝室から出るとまず、カーテンを開ける。
今日の天気は晴れ。
朝の太陽が部屋中に降り注ぐ。
男は一瞬外の景色に目をやったが、すぐに洗面所に向かう。
朝の身支度を無駄なく終わらせると、次はキッチンへ。
コーヒーの豆を機械に入れ出来上がるまで新聞を読む。
まずは経済欄。
世の中の動きをここで仕入れているようだ。
太陽の光りとともにコーヒーの香りが部屋を占領する。
男は立ち上がり、お気に入りのカップに注ぐ。
砂糖もミルクも入れず、コーヒー本来の味を楽しむ。
独身貴族らしい朝の様子。
飲み終えたカップは流しに置いておく。
男はさきほどから、リビングの時計を気にしているようだ。
そそくさと自室に戻る様子は何とも言えない。
部屋から出てきた男は、部屋着にしてはいい物を着てでてきた。
どこかに出掛けるのだろうか?
先ほどコーヒーを飲んでいたテーブルに戻り、花瓶にバラの花とかすみ草を飾る。
花瓶を端に置いたり、真ん中に置いたり。
置く場所を吟味している。
少しテーブルから離れたところから確認する。
真ん中に置くことに決まったようだ。
テーブルの上にあったタバコに手をつけ、口にタバコをく咥え、ライターで火をつけようと……。
そしてまた時計に目をやる。
ライターの火を消し、咥えていたタバコを戻す。
どうやら、時間がないみたいだ。
タバコを名残惜しそうに見つめている。
そんなに吸いたいなら吸えばいいのに…。
タバコをテーブルに置き、流しに置いたカップを洗う。
その横で、お湯が沸かされている。
出掛けるのではないみたいだ。
洗い終わって、また男は時計に視線を合わせる。