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ペア
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ペア-2

―ピンポーン

部屋にインターホンの音が響く。

男のクールな顔に笑みがもれる。
でも、すぐに元通り。

「開いているから入りなさい。」
『はい。』

お客さん…のようだ。
女性の…。

男は沸かしたお湯をティーポットに入れる。


「お邪魔します。」
玄関先から若い女の声がする。
明らかに、この男より若い女の声が。

「おはよう。」
さっきよりかは笑顔が少ない顔だが、クールフェイスではない。

「おはようございます。遅かったですか?」
「いいや。時間通りだ。」
彼女と目を合わせている男は、今日一番の顔をしている。
本人は気付いているのだろうか?

「よかった。途中で道を尋ねられたんですよ。
このあたりは知らないって言ったんですけど、中々離してもらえなくて…。」
「そう。それって男?女?」
男の表情が曇る。

「先生くらいの歳の男性です。」
「そう。世の中物騒だから気をつけろ。」
どうも気に食わなかったらしい。
言葉までに棘が入る。

「先生?」
「ん?紅茶でいいだろ?」
目をあわさずに男はキッチンへ。

「はい…。」
「用意するから待ってなさい。」
先生口調に戻っていることを本人は自覚していないようだが、女のほうは気がついている。
少しションボリとしている。

「手伝います。」
「じゃあ、カップを用意してくれるか?」

「はい。」
女の不自然な笑顔を男は見ていない。

女は男の傍にある食器棚の前に立つ。

「あれ?お揃いで買ったカップが片方ないんですけど…。
割っちゃいました…?」
完全に笑顔は消えて、今にも泣きそうな顔になる。

「あっ……。いや…割ってない。」
バツが悪そうに男は言う。

「捨てちゃいました…?」
不安げな女。

「乾燥機に入ってる。」
「乾燥機?」
きょとんとした顔で女は男を見上げる。

「朝、コーヒーを飲んだときに使った。」
「朝?」

「悪いか?」
手を口元に持っていって表情を隠す男。

「え?!いや!全然!!使ってください。」
顔を赤くして、自然な笑顔に戻る女。

キッチンから紅茶の香。
暖かな日差しと、二人の温かな関係がテーブルに流れる。

テーブルにはお揃いの2つのカップと、二人の笑顔が並ぶ。


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