身長差のない恋人-2
〜**彼女side**〜
あたしの彼氏は身長165cm。あたしの身長は163cm。
はっきり言って目線が一緒。
そしてそこら辺の女より数倍可愛い‥‥。
あっ!これ本人には禁句。かなりコンプレックスに感じてるみたい。
あたしに告白してきたときなんか、顔真っ赤にして
「俺、背低いし女顔だけど柏木さんのこと絶対守ってみせるから‥だから俺と付き合ってください!!」
だって。可愛すぎて思わず差し出された握って引っ張って抱き締めちゃったよ。かなり動揺してたね。
うん、本当可愛い。
それからあたし達は付き合い始めた。
初めてのデートの日、あたしは緒方君にものすごく悪いことをした。
何も考えずにヒールのある靴をはいてしまった。
一緒に並んで歩くとあたしのほうが背が高くなってしまう。
あたしはすぐに近くの自販機でコーヒーを買った。
緒方君のご機嫌をとるためではなく、着替えるため。あたしはわざとコーヒーのタブを開けたあと、自分にかかるようにコーヒーを落とした。
緒方くんは何も気付かずあたしの心配をした。
ちょっと罪悪感‥‥。
でもあたしはこれで着替える口実ができた。
すぐに家に帰ってスニーカーに合うようなカジュアルな服に着替えた。
本当はデートだからスカートはきたかったんだけど。緒方くんに惨めな思いはさせたくないし、仕方ないよね。
それから二人で映画館に行った。
あたしの席の前の人が座高が高くて、少し見づらいなって思ってたら緒方くんが席を交換してくれた。
このときあたしは身長差がないのも悪くないなって思った。
きっと背が高い彼氏だったら気付いてないだろう。
目線が一緒だからこそ、見える世界が一緒だからこそこうしてあたしに気をつかってくれる。
そんなちょっとしたことであたしはますます緒方くんを好きになった。
何回目かのデートの日、約束の時間を過ぎて1時間待っても、2時間待っても緒方君は来ない。
あたしは事故にでもあったのか、それとも事件に巻き込まれたのかと心配になった。
もしかしたら、可愛いから誘拐されたんじゃないか‥
なんて考えていたら遠くのほうで緒方くんを発見した。