reality ability‐第1話‐天界、大都市center circle‐-3
「‥‥織音お母様、いい加減にしないと、皇希さんが‥‥」
「織音、‥‥ちょっと来い。」
「ん?」
織音は皇希に近寄った。すると、
〈シュパ〜ン!〉
辺りにいい音が反響した。それも、かなり大きかった。
『‥‥‥』
「い、いた〜〜い!」
「当たり前だ。」
そう、皇希は珍しく、‥‥いや、初めて織音の頭を平手打ちで頭を叩いた。
「なんで叩くのよ?」
「‥‥なんとなくだ。今までならなんとか抑えていたが、今はこの怒りをお前に当てたかっただけだ。」
「うぅ、酷いわ。」
〈ギロリ〉
「何か言ったか?」
「う、な、何でもないわ。うん、何でもない。」
これまた珍しく皇希が織音を沈黙状態にさせた。
「さて、‥‥えっと何て呼べば?」
「呼び捨てでいいですよ?織音お母様が呼び捨てを許してくれる者なんて、そうそう居ませんから。」
「そうか。じゃあ、螺樹と呼ばせてもらうよ。」
「はい。では、話を進めましょう。」
「ああ。」
「始めに言っておきます。既に北の町・ホワイトタウン、東の森・ホーリーフォレスト、南の草原・ウィンドグラスランド、西の洞窟・デスケイブはカオスの手によって、占拠されました。」
「な、なんだって!」
と凰輝が驚いた。
「バカな、各地には守護神がいたはずだぞ!」
「ええ。しかし、一瞬の隙を狙われました。」
「どういう事だ?」
「カオスの四天王が一つの地方だけを襲ったんですよ。もちろん、僕はそこに援軍を送ろうとしました。しかし、この選択が間違えでした。初めは北に四天王が集まっていました。東の守護神に北の方に行かせました。‥‥すると、北にいたはずの四天王が一瞬にして東に移動したんです。このように全方面は占拠されました。」
「なっ!バカな!」
螺樹は織音を見た。
「織音お母様、知ってますか?一瞬にして移動する方法を?」
「‥‥皇希が前に使った“禁断詠唱”‥‥」
「“禁断詠唱”ですか。それは誰が知ってますか?」
「今は司義莉お父様だけしか知らないはずだわ。失われた“知識”の事だから。」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
一同は黙る。すると、今まで黙っていた皇希がどこかへと歩き出す。
「皇?どこに行くの?」
「‥‥トイレってどこだ?」
「‥‥はぁ。そこから出て、右側の廊下の三つ目の左の扉よ。」
「サンキュー。」
皇希は閲覧の間から出ていった。