『THE ENDLESS』外伝〜光羽編荒の章-4
「必ず!仇を討つ!!」
蓬莱の動きが変わった。押されていたのが、押し返し…いや、あれはもう後が無い者の動きだ。止めなくては…いや…無駄か…?ここは邪魔しない方がいいかもしれない。
蓬莱は力任せに錫杖を振り回している。その一撃一撃の重さに、敵に僅かな隙が生まれ、少しずつ大きくなっていく。しかしそれは蓬莱とて同じ。きっと決着が着くまで後数秒……
錫杖の先端が額を狙い、弾かれた。首筋…弾かれ、その勢いを最大限に利用し、回転、相手の胴を貫いた――
勝った…!?
雷。近い。その光が二人を照らす…
「蓬莱!」
敵の薙刀の先は、蓬莱の喉笛を裂いていた。蓬莱は敵と共に、光の粒子となり、消えた。
また、俺のせいで…
「蓬莱までもが…」
ふと、背後に気配を感じた。振り向くと同時に立ち上がる。少々血を吐いた。
「どうした光羽、私は味方だぞ」
颯葉…微笑んでいる?諦めの表情か?
…また雷だ。珍しい。
「俺達もここまでの様だな…尤も、俺の場合人生のゲームオーバーになるかもしれないが…つっ!」
またもや俺は倒れた。頬を打たれ…
「颯…葉?」
「ゲームオーバーになるなら私だけだ!み…いや、光は私が守って……」
何かを見つけた様だ。颯葉は敵の方を見、訝しげに眉をひそめた。
何だ?颯葉も奴らも、何処を見ている?しかし、さっきから雷がうるさい…
―!!!!!!!!!!!!眼を灼く閃光、耳を穿つ轟音―
何だ!?何が起こった!?何も見えない―
落ち着け、目を閉じろ……暫く待ってから目を開け…
俺は目を開き、目を疑った。ほんの十数秒前まで俺達を囲んでいた敵の輪、その一部が消え、代わりにそこには小さなクレーターができていた。
そしてその手前では、碧い服に紫の甲冑を纏い、黒光りする剣を持った仮面のプレイヤーが立ち、こちらを見ている。
…違う。見ているのは俺達の背後の賊…
情けない声や足音で、そいつらが逃げ出したのが分かった。俺はというと、眼前の仮面のプレイヤーから目を離せないでいる。
仮面が剣を持った腕を差し上げた。すると、背後から再びあの轟音が聞こえてきた。そして仮面はこちらを見、初めて俺達に気付いた様な雰囲気を見せた。
「危ない所でしたな、儂は紫弦。西を勝利に導く者。以後御見知り置きを。では」
紫弦と名乗った者はそれだけ言うと、頭上の雲と共に掻き消えた。