『THE ENDLESS』外伝〜光羽編荒の章-3
「うう……」
何が起きた?
「マスター?大丈夫ですか?」
しゃがみ込んで俺を見ている…ミリア…か?…
「ここは私に…マスターはその間に逃げて下さい」
待て、と言おうと思ったが、出たのは呻き声だけだった。
見る間にミリアはすっくと立ち上がり、敵の側へ歩み寄って行く。
――このまま放ってはおけない。
残り少ない魔力を振り絞って傷を治す。傷の深さ故か、いつもより時間がかかる。
「ミリア!」
きっとミリアでは奴には勝てない。しかしもしかしたら……
―コツッ
何だこれは。
ミリアの杖だ。
何故ここにある。
瞬間、恐ろしい答が見えた。
気付けば俺は走り出していた。まだ癒えていない傷が激しく痛むが、そんな事はどうでもいい。
…ミリアが振り向いた。
何故逃げないんですと表情で語っている。
そして、その顔が苦痛に歪み、光の粒子となって消えた。
―俺は、初めてメンバーを失った。
「マスター」
背後から声。
「蓬莱か…」
「任せて下さい」
「……」
何も言えない。もはや魔力は底をついた。俺には何もできない。しかし蓬莱までやられたら俺はどうすればいい?
蓬莱はずいと進み出て、錫杖を構えた。
「仇を討たせてもらう」
「……」
敵は無言で斬りかかり、蓬莱は錫杖でそれを止めた。激しい打ち合いが始まる。刃と杖がぶつかり合い、澄んだ音を立てる。それに錫杖自身の奏でる音が混じる。腹立たしいまでに軽やかな音だ。
戦いは互角だ。いや、蓬莱が押されてきた。
勝て…負けるな…
気付けば鋭刃達の姿は見えない。やられたのか?颯葉は?
いた。敵を俺に近付けまいとしている。
「うっ…」
立っているのが辛くなってきた。と同時に、激しい自責の念に駆られた。俺は何故こんな無謀な行動に出たのか。ミリアや、恐らく鋭刃達がやられたのは誰のせいか?考えるまでもない。俺のせいだ。俺が悪い。たかがゲームだ、そこまで悪く思う必要はないという考えが、浮かんでは叩き潰される。
今も蓬莱は防戦一方だ。上下左右から襲い来る薙刀を錫杖で器用に躱している。
まだ殆ど傷を負っていない様だが、この調子では時間の問題だろう。俺に応援する手段は無いのか。アイテムを探るしかあるまい。
今日は強力なアイテムを準備して来た。何か使える物がある筈…
回復アイテムは無い。己の力を過信した結果だ。
爆弾…はいい活用方法が見つからない。
数秒無敵化する丸薬…何故もっと早くに使わなかったのか。
……どれも役に立ちそうもない。