「突発的な彼は。」-1
…あっ、蓮見君だっ。
相変わらず格好良いなぁ…。
えっ?!こっち来るの?!えっ!!
どうしよう、隠れる場所無いよぉ!!
やば…心臓が…!!
…いや、待て待て。
普通に通りすぎれば良いだけじゃん。
大体、学校の廊下で擦れ違うくらい日常茶飯事じゃない。
何焦ってんのよ羽苗!!自惚れすぎよ!!
あっ、こんな事してる間にもう目の前に立ってる…
……………立ってる??
「楠木サン。」
……………はい。
「…楠木サン?」
「はっ、は…」
何で??!どうして??!何で蓮見君が私に??!
聞いてないよ聞いてないよ!!アポなしはキツいよ神様!!
「胸元、透けてますよ。」
……………は???
あれ?これ蓮見君だよね??
今私の目の前に居る人って、蓮見君で合ってるよね??
冷静で知的で格好良くて声が低くて、男女問わずに優しい蓮見君で合ってますよね??!
「今日は…黒ですか。」
何だその品定してるような目!!
てか、あんたマジ誰よ!!!!絶対違う!!蓮見君じゃないよこんなの!!
いくら放課後で廊下に生徒がいないからって、こんな健全な男子高校生の思考丸裸にするような、そんな失礼極まりない男じゃっ…
「男は、狼なんですよ。」
…今、何が???
てか、何で???
近くでも麗しゅう顔が、私の目の前で微笑ってる。
んで、また近付いて…って、
「きぃやぁ――――――――っっ!!!!」
夕陽が差し込む廊下に、私の絶叫が響き渡った。
嘘!!嘘だよね??嘘でしょう??!!
「一緒に、帰りましょうか。」
そんな私を、おかしそうに笑って見つめると彼は言った。
「狼でも、姫には忠誠を誓うんですよ。」
…………???!!?!!!!
突然の誓約に戸惑いつつも、必死で縦に首を振る私なのだった。
●End?●