茂木くん-3
音楽室はカーテンが敷かれ、暗くて見えない。
しかし茂木は見えているかのように、藍音を教卓の上に座らせた。
ザァ〜ッ―
「これでも怖い?」
茂木はカーテンを開けた。
「え?」
こちらに振り返った茂木の目が一瞬赤く光った気がしたが、教卓へと戻ってきた時には普通に戻っていた。
見間違いかーーと思った藍音の頬を茂木が包み込みキスをする。
「宮下さんて、本当に危なっかしいよね。仲良くも無い奴に下着見せたり、キスさせたり。将来心配なんだけど」
ちゃんと気をつけなきゃ騙されちゃうよーー茂木はなんとも言えない顔で笑った。
「そういえば、なんで音楽室にいたの?さっきピアノ弾いてたの茂木君なの?うまいね」
「うん、まぁ〜小さい頃からやってるし、今日は部活がなかったから。しかも合鍵作ったし簡単に入れるんだよね」
茂木は吹奏楽部だが、今日は顧問が不在で部活は休みだった。
「鍵って勝手に作っていいの?」
「普通だめでしょ」
「そうだよね……ねぇ!こんなにピアノうまいんだから合唱祭の伴奏やったらいいんじゃない?」
「絶対やだ。拘束時間が長いからやりたくない」
「でも、私もっと茂木くんのピアノ聞きたいな」
「う〜ん。どうしようかな」
「じゃあ、んっ」
藍音が声を出した瞬間、茂木はまたキスをした。
「宮下さんて、普段自信がなさそうって感じなのに、グイグイくるよね」
そう言うと茂木はもう1度、藍音にキスをしながら教卓に寝かせる。
「そんなに言うんだったら、宮下さんが指揮やるならやろうかな」
「えっ?!む、無理だよ私なんか!指揮なんてやったことないもん」
「合唱コンクールまで、いろんなことを一緒に勉強しようね」
藍音の顔を覗き込むその目は再び赤く光っていた。