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幽霊と一緒
【コメディ その他小説】

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幽霊と一緒〜受難編〜-6

「担架で運ぶんだったら疾風も手伝ってくれ」
「たんか? 何言ってるんだよ。蒼氷に鎮魂錠を飲ませてこいって意味」
 ああ、そういう意味か。やっぱりお前たちに人の感情はないんだな。いつぞや僕が風邪を引いたときとそうだった気がする。
「……」
 返事もせず、蒼氷のもとへと歩み寄った。
「……飲め」
 仮死状態のような蒼氷に半ば無理矢理だが鎮魂錠を飲ませる。良心が痛む。
 気のせいか、安堵の表情になった蒼氷を見下ろし、
「お大事に」
 とだけ言い残した。
 ……色んな意味を込めて。
 無事、任務を終え、二人が隠れている植木鉢の場所へ戻った。戻る際、客観的に見ると隠れている姿はとても怪しいことに気付いたが、あえて言わないことにする。
 笑顔の璃逢が僕を迎える。
「お疲れさま」
 まったく、心身ともにズタボロだ。
「蒼氷はあのままでいいのか?」
「大丈夫だよ。そろそろ解ける頃だから」
 解ける?
 振り向くと、大勢の野次馬や教師に囲まれている蒼氷は、さっきとは打って変わって血色の良い顔になっていた。
 だが、そのまま保健室へと直行となった。
 ちなみに、蒼氷は後にこの腹痛のことを「地獄を見た」と語っている。
「じゃ、俺たちも昼ご飯にしようか。たまには学食でね」
 疾風の目は明らかに僕に対し「奢れ」と言っている。璃逢も同じだ。
 こいつら、遠慮って言葉を知らないのか?
「言っておくけど僕の奢りってのは無しだぞ」
「わかってるよ。今日は財布も持ってきてるしね」
「じゃあ、私は疾風に奢ってもらうわ」
 とりあえず一安心。
 この学食は安くて量も多く、大変経済的だ。けれど3人分の支払いとなれば、僕の千円札は無情にも消えていくだろう。でも1人分なら五百円もかからない。
 余談だが、疾風と璃逢の二人は僕に秘密でバイトをしているらしく、毎月食費だと言ってお金を入れてくれる。どうせなら“迷惑料”も払って欲しい。けっして僕がケチなわけではない。
「じゃあ、たまにはここで食うか」
 僕たちは学食のテーブルに座り、メニューを開いた(大したものはないが)。

「あれ、財布がない」
 天ぷらうどん大盛りを食べ切った疾風が言った。
 続けて、スパゲッティだか何だかわからないパスタ類を食べた璃逢も言う。
「えー! 支払いどうすんのよ」
 二人のセリフが棒読みに聞こえるのは僕の心が病んでいるからだろうか?
 どうも計画的犯行にしか感じられない。
「仕方ないか。零、申し訳ないけど……」
 僕は無言で立ち上がり、三人分の食事代を支払ってきた。ここが食券システムならこんなことにはならなかっただろうに。
 不幸中の幸いと言うべきか、僕が食べたのは“ラーメン”と、かなりシンプルだったおかげで少しは金額も抑えられた。
 結局、僕の財布からは二枚の千円札が消えていった。


次の日、僕は黒川に呼び出された。正しくは璃逢から「会議室に行きなさい」と命令されただけなのだが。
 先日と同じように、黒川はパイプ椅子にチョコンと座っていた。会議室、あるいはそのポジションが好きなのだろうか。
「……」
「……」
 上記の括弧は、前者が黒川で後者が僕だ。呼ばれた来たから黙って黒川の反応を待っているだけなのだが、黒川は口を開かない。


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