幽霊と一緒〜受難編〜-2
「単刀直入に言うよ」
と、璃逢。……お前等、手を離せ。いつまで僕を拘束しているつもりなんだよ。
「まぁまぁ璃逢、ここで、話す事じゃないよ。零、詳しい話はこっちでね」
そのまま二人に連行される形で僕は拉致られた。
階段の登りで引きずられている時(すねが痛い)、心の中で僕は叫んだ。
「I want freedom!」と。
結局、僕は最後まで無抵抗のまま、二人に強制連行された。
「ここでお客様がお待ちだよ」
入り口のプレートにはしっかりと「会議室」と記されていた。僕を軍法会議にでもかけるつもりか?
璃逢が扉を開き、
「さぁ、入った入った」
横綱の突っ張りのように僕の背中を押した。
奥の方に1人の女の子が行儀よくパイプ椅子に座っている。
「………こんにちは」
と、その子は軽く会釈した。動物に例えるなら猫のような女の子だ。
「あ、あぁ」
「ほら、ボケッとしてないで早く座った!」
疾風に促され、そばにあったパイプ椅子に腰を下ろす。逃げるわけにもいかないだろ?
「それで話って何だ?」
「蒼氷のことさ」
疾風がサラリと言った。
じゃあ僕じゃなくて本人を呼べばいいじゃないか。
「で、その子は誰?」
もし蒼氷にのみ関する話なら、第三者が聞くことになる。
「どう? 可愛いでしょ?」
黙り込んだまま座っている小さな体に抱き付きながら璃逢が言った。かなり迷惑そうだ。
「この子、隣のクラスの黒川棗(クロカワ ナツメ)って言うんだけどね」
璃逢は笑顔のまま続けざまに、
「閻魔大王の娘なのよ」
頭痛とめまいが同時に僕を襲った。よし、帰らせてもらおう。
頭を押さえながら立ち上がった。
「あれ、どこに行くつもり?」
「帰る。いや、帰らせてくれ」
「ダメダメ。ここからが本題なんだから」
だから蒼氷を呼べばいいじゃないか。
それに、この黒川って子が閻魔の娘? 馬鹿馬鹿しい。
「仕方ないな。で、本題は?」
再び腰を下ろした。
もちろん、聞くだけ聞いたら帰るつもりだ。厄介ごとに巻き込まれるのは御免だし。
「まぁまぁ、まずは棗の話を聞きなさいよ。棗、言いたい事があるんだよね?」
璃逢が言った。
「………」
それに対し、黒川は黙ったまま頷いた。わからん。何が言いたいんだ?
「棗は蒼氷に関することでここに来たらしいわ」
話が進まないと察したのか、璃逢が代弁した。
僕は頬杖をしながら、
「蒼氷を閻魔に会わせて舌でも引き抜くつもりか?」
そうなったら煩いのが1人消えてハッピーエンドだな。喜んで蒼氷を売ろう。
「違う」
突然、黒川が口を開いた。
「沖田は力を持っている」
力? あいにくあいつの“学力”は皆無に等しいぞ。
黒川は僕たち3人に喋らせる隙も与えず、音声アナウンスのように話を続けた。
「沖田はあなたと同じ霊能力を持っている。だが同じと言っても基本的な能力値は沖田の方が数百倍の高さ。その力は私と疾風と璃逢3人の合計値をもはるかに凌駕する」
…………。