たったひとこと【第6話:写真は嘘を語らない】-6
「くるめに話したのか!?」
「でも六呂くんを信じてるって言って来なかったの」
「・・・そうか」
また背を向ける六呂。さっきよりもその耳は赤い。
「とにかくアンタらは帰んな。夜まで仕事が入ってんだ」
その日、あまり言葉を交さないまま2人は帰路に着いた。もちろんラブホテル街は遠回りした。
○○○○○○○○○○○○
その日の夜。
詩乃はベットで考えていた。
きっと自分がくるめの立場だったら疑ってしまうだろうと。
アタシってダメだなぁ
ごつん
ため息と共に大きく寝返りを打った拍子に膝をタンスにぶつけた。
「いたあっ・・・ん?」
タンスの上から何かが落ちていた。
手に取ってみる。
「あ・・・」
写真立てだった。
天使が祝福している装飾の中では子供の詩乃と成之が手を繋いで笑っている。
「・・・そう、だよね」
アタシ達だって、きっと
○○○○○○○○○○○○
「おはよ」
「はよ」
翌朝、いつもの時間にいつもの場所で待ち合わせ。
最近は普通に喋れるようになってきたが、学校が近いので2人の時間もすごく短い。
詩乃は焦っていた。
「また一平の奴がさ」
早く言わなくちゃ!
とうとう校門前まで来た所で
「あのさっ、アタシお弁当作ってきたんだけど、食べてっ!」
それだけ言うと、弁当を成之に押し付けて、脱兎の如く学校に逃げて行った。
「・・・え?あ・・・」
手元に乗っている幸福の重み。それが夢ではないことを証明していた。
第7話へ続く・・・