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be dazed-自失は禁物-
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be dazed-自失は禁物--2

「げーむすたーと♪」
言った後にすぐに引き金を引いた。
カチッ――
一発目 スカ
安全装置を外す
カチッ――
二発目 スカ
惜し気もなく
三発目
カチッ――
スカ
冷たい風が頬を撫でる
さぁ 四発目
そろそろだろう
安全装置を外す
引き金に指をかける
力を入れて――――
「おいっ!早まんな。宇香!!」
屋上の扉がけたたましい音と共に開け放たれた。そこに立っていた男に驚いて、思わず力を入れてしまった。
―――カチッ
この音は ハズレ
緊張が一気に途切れて、私は膝を折ってしまった。
そして、尻餅を付いた。「あ――――宇香、平気か?お前、何やってんだよ」
倒れそうになった私を抱き留め彼――紫苑は胸に抱き寄せた。
紫苑はなんでだか、大粒の涙を眼から零している。
「コレ……でね、死のーと思って。それより。どうして泣いてるの?」
紫苑の眼の前に私の銃を見せながら聞いた。すると紫苑はその銃をがしっと私から奪い取ると、屋上の端に投げ捨て私をもっときつく抱き締めてきた。
「……馬鹿。判らないのか、この鈍感女。心配――したんだよ。お前、いきなり飛び出して行くから。…っ。――お前こそいったいどうしたんだよ」
耳元で囁かれてくすぐったい。
「べーつにぃ。なんだか判らないけどああしたかった。この空見てたら死にたくなった」
その空を紫苑の頭を横に見ながら見る。
そっか。この空のせいで死にたくなったのか。
でも。違う気がする。
「嘘つけ…」
紫苑が呟いた。
そうだ。嘘だ。また自分に素直になれてない。
「うん。ごめん。嘘つきました。本当は…追い詰められてたの。紫苑、今日の仕事全部一人でやろーとしてるから手柄独り占めしたいんだって。ボスに気に入られたいんだって。胸が苦しくなって。気付いたら此処にいて。死のうとして、た」
辛い。自分の穴を紫苑に見せるのは。……なんで。辛いんだ?
「違う。違うよ。何勘違いしてんだ。…今日の話は危険だから。宇香に――怪我させたくなかったから。だから俺が一人でやった。勘違いしてんなよ。…馬鹿野郎」
強い口調の中にも優しさがいっぱい詰まった言葉一つ一つが嬉しかった。ありがとうの気持ちで私も紫苑を抱き返した。
「好きだ。大好きだ。…しょうもないくらいに」
好き――?
嗚呼。それだ。きっとこの胸のわだかまりは。やっと、溶けたよ。私の想い。
「好き?‥‥私も、好き‥‥みたい」


高い空の下で、まだ仕事があるのに。

この屋上を私は離れたくなかった。


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